「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

 

「2024年、アフターコロナのエトセトラを報告?します 6月篇」

 

 清八でございます。毎月、「食」に関する書籍・漫画・DVDなど、主に中古品を探しては買い求め、読んだり、観たりして学習しております。それでは、6月分を報告させていただきます。

 

■赤瀬川原平著「千利休 無言の前衛」岩波新書 (2009.5.15) 中古本

 1989年9月15日に公開された映画「利休」。原作は野上彌生子の「秀吉と利休」ですが、脚本は赤瀬川原平でした。この新書は、映画のシナリオ執筆を契機に前衛芸術家としての利休について書かれたエッセイでした。

 17頁の「無口な芸術」から「‥いうまでもなく、お茶というのは静かな芸術である。言葉で議論し、論理的な結論を得るといったものではないのだから、もともとおしゃべりな世界ではないのである。それよりもお茶室でおこないながら、その流れの中で、手が囁き、物が呟く、それがそのまま会話となるのであるから、日常生活に対比すれば口数の少ない、無口な世界だ。‥」

 18頁には「‥人々はただお茶を飲み、飲みながらその味にこだわり、その飲み方にこだわり、そのお茶で人をもてなすようになり、そのもてなし方を究めながら、茶碗、釜、炭火、花、掛軸、お茶室、露地、飛石などなど、それらが複雑に響き合うところのものを創り上げていった。つまりお茶を点てて飲み、そのために料理を作って食べる、そのおこないから栄養やカロリーを除いてもなお残る価値、というものをふくらませていったのである。‥」

 決して、お茶が型やセレモニーでないことをはっきりと理解させられる文章でした。(画像①)

 


(画像①千利休 無言の前衛)

 

■森下典子著「晴嵐の庭にすわる」文藝春秋 (2021.11.25) 中古本

 2018年10月13日に公開された映画「日日是好日」の原作者が、映画化が決まった時から自ら茶道指導スタッフとして制作現場にかかわり、公開に至るまでのエピソードが綴られた一冊でした。

 42頁に、「‥しかし、大きな問題があった。それは、これが『茶道の映画』だということだった。映画の半分は、稽古場でお点前をするシーンだ。けれど、主演の黒木さんも、先生役の樹木さんも、全くお茶の経験がないという。監督もプロデューサーも、関係者の誰一人、茶道の経験者がいないのだ。‥」

 69頁に、「‥この映画は茶道のお点前を教えるための映画ではないけれど、現代劇として初めて初のお茶の映画ということになれば、茶道の先生や、稽古に通っている人たちが大勢観てくださることになるかもしれない。お点前やしつらえ、お道具の組み合わせ、床の間の花や掛け軸、お菓子の季節感、水屋や茶庭が、大勢のお茶人の目にさらされることになる。‥」

 112頁に、「‥控室の入り口の暖簾がフワッとなびいた。私の前を、花浅葱の上品な江戸小紋と、塩瀬の帯のお太鼓の柄が、風のように過ぎた。足袋のきりりとした白さが、目の端に見えた。私は、その姿を、(お茶の先生だ‥‥)と思いながら、ぼんやりと見送った。次の瞬間、目の奥からハッと覚めた。(‥‥樹木さんだったのか!)確かに『お茶の先生』だった。着物も佇まいも‥‥。その時、背中がゾワッとした。奇抜さや外連は、微塵もなかった。…」

 もう一度、映画館で観たい、と思ってしまいました。(画像②)

 


(画像②晴嵐の庭にすわる)

 

 

■徳川無声著「話術」新潮文庫 (2018.4.1) 中古本

 1939年、初めて吉川英治原作の「宮本武蔵」をラジオで朗読し、当時のマルチタレントであり「話術の神様」による「話し方の教科書」です。

 37~41頁の「言葉の表現」では、話術の要を書いておられます。「‥話はコトバの建築であります。掘立小屋のようなハナシもあり、ビルディングのようなハナシもある。掘建小屋とビルディングでは、大きさも違いますが、それに使用する建築材料も違います。ですから、当人はビルディングみたいな話をするつもりでも、材料のコトバが、あいにく小屋用の物だったら、とてもビルにはなりません。さて、掘建小屋の材料で、他の物を造るとします。塀が造れます。物干台が造れます。梯子が造れます。踏み台が造れます。その他いろいろ造れましょうが、どっちにしても大したものは造れません。‥」

 101~105頁の「メニューで泣かせた話術」には、あるエピソードが書かれていました。「‥フランスのある名優が、ある有名な劇作家と、『演技が大切か、脚本が大切か』という議論をしました。それが宴会の席上でしたから、他の列席者たちは、非常な興味を持って、この勝負如何相成るかと見ておりました。『よろしい。ではこうしよう。』と名優が申しました。『君は脚本が俳優の演技より重要だと言う、僕はその反対に、脚本なんかむしろどうでも構わないと言う。互いに言い合っていても際限がないから、丁度、ここにメニューがある。これから僕がこの料理表を読んで、ここにいる諸君を全部泣かして見せよう。』と、いよいよその御料理献立表を、いとも悲しき台詞の口調で読み始めました。なんと、それを聞いているうちに、講座の人々すっかり感動して、涙を流さざるなし、という有様。この論争は、みごとその名優の勝利となったそうです。(画像③)

 


(画像③話術)

 

 

■日本トランスオーシャン航空機内誌「CORALWAY5・6月号」(2024.6.1)

 糸満市で暮らしている妹が父の法事のため実家に戻ってきました。機内誌もお土産の一つとなりました。
44頁に「石垣島の海洋漂着ゴミをアップサイクル!」という記事がありました。「‥八重山の美しい浜辺には、年間500トンもの海洋ゴミが漂着しています。石垣島ではその課題を解決する方法として、ビーチクリーンを行い、そこで集めた海洋漂着プラスチックをアップサイクルする取り組みが広がっています。JAL JTAセールスでは、石垣島で課題解決に取り組む縄文企画とコラボ、石垣島の海洋漂着プラスチックと、JTAの機内から回収した廃棄プラスチックを原料に、オリジナルの飛行機型スマートフォンスタンドを制作しました。‥」とありました。

 数年前からマスコミ報道されていましたが、漂着ゴミは回収できても「ペットボトル」「発砲スチロール」「燃えないもの」「瓶・缶」「電球・割れたガラス」「燃えるもの」に分別しなければならないのですが、インスリンの注射器や注射針のケースなど(日本国内では使用されていない)医療廃棄物も多いのだそうです。サンゴ礁を病気にしないためにも世界全体での取り組みが必須なんですが、とりあえず私たち個人が出来る事はないのか?考えてしまいました。(画像④)

 


(画像④CORALWAY)

 

 

■安藤鶴夫著「おやじの女」青蛙房 (1961.11.16) 中古本

 2019年、二代目社長の死去により廃業された出版社で、江戸時代の文化関連、落語・寄席関連を出版してくれました。同社の書籍には奥付に必ず発行番号が押されています。廃業後に古書店に多く流通しているらしく、かなり古い書籍でも状態が良く、初めて手にする物が多いです。この随筆集には、昭和28年3月に読売新聞に掲載され、今で言う社会現象になっていった「たいやき」の話が83~88頁に掲載されていました。「‥四谷見附を新宿に向って左側、最初の有明家の横丁と、三つめの西念寺横丁との間の横丁に、たいやき屋のわかばという店がある。舞台正面下手に老夫婦がたいやきを焼いていて、上手には浴衣を作り直したと覚しいのれんが掛かっていて、土間には二人掛けの作りつけの縁台とテーブルが置かれてある。去年の秋のことで、おなじ町内の若葉という町に越してくる前、女房と二人、普請場の帰りに、子供達の土産にと思って寄ってみた。焼けるあいだ、そこへ掛けながら、ここで食べさせてくれるかといったら、すぐ皿にたいやきを二ひき持ってきてくれた。しッぽからたべたら、しッぽのはじッこまで、見事にあんこが入っていた。ぼくはたいやきの通では決してないが、戦争この方、もう永い間、たいやきのしッぽにあんこの入っているのをたべたことがない。たいやきのしッぽにあんこが入っているのは当りまえのことだと思うのだが、久しくそういうたいやきにめぐりあえなかったのである。ぼくはいたく感動して、紙風船だの、色めがねだの、ゴムのパチンコだのという駄菓子屋向きの玩具を並べた一隅から、わざわざ顔を出して、そのことを主人に褒めた。‥」

 私がかすかに記憶しているのは、当時の文化人?たちが、あんこがしッぽまで入っていることが「好むか、好まないか」で酒の肴になったようです。今なら、モーニングショーとかワイドショーで取り上げられる‥‥わけは無いですよね。(画像⑤)

 

 


(画像⑤おやじの女)

 

■松田美智子著「家庭料理は郷土料理から始まります。」平凡社 (2023.3.22) 中古本

 4月20日、現物は豊橋まちなか図書館で発見、古書店で見つけて購入出来ました。料理研究家、日本雑穀協会理事、1993より「松田美智子料理教室」を主宰されている著者による各地の郷土料理の紹介でした。258~259頁の「おわりに」からです。「‥各地にその土地の郷土料理があります。これが家庭料理の原点だと気づかされることが多く、日本の大切な食文化です。身近な材料をいかにおいしく食べるか。その地の料理の『理』を大切にしていかなくてはと強く思います。『簡単』がもてはやされる時代ですが、やはり、『ちゃんと作るとおいしい、健康によい』を経験しているからこそ、その方なりの時短を見つけられるのがベストです。‥」その通りだと思いました。49~53頁には、静岡県から「桜海老と葱のかき揚げ」が取り上げられていました。

「‥昔はいい天ぷら屋さんというのがわりあい限られていて、天ぷらを食べに行くということに、ちょっと特別感がありました。そのかわり、私が子どもの頃、母の精進揚げは定番の家庭料理、ちょっと衣が厚くてもったりしているのが家庭の天ぷらでした。今は腕の立つ天ぷら屋さんも増えたけれど、そういう店ではかき揚げがあっても桜海老などは使わずに、芝海老や小柱です。私はお蕎麦屋さんで、“由比の桜海老かき揚げ”という品書きを見つけると、絶対頼みます。‥」

 私の実家の父は殆どお酒を飲まなかったので、蕎麦屋、うどん屋、ラーメン屋に連れて行ってくれても、当然、酒の肴になるような一皿の注文はありませんでした。というわけでもないのですが、大学生になるまで居酒屋以外の飲食店でビールと肴を注文したことはありませんでした。2015年10月から定期的に通っている、名古屋・柳橋中央市場内の「天ぷら小島」さん。ビールとワインと創作天ぷら、「天ぷら専門店」ではないのだろうけど、毎回、わくわくドキドキで楽しませていただいております。天ぷら定食、天丼ではなく、天ぷらを肴にビール、ワインをいただく。私にとっては「いい天ぷら屋」さんだと思っています。(画像⑥)

 


(画像⑥家庭料理は郷土料理から始まります。)

 

 

 一昨年8月13日の「ちりとてちんNo.202」に書かせていただきましたが、湖西市新居町内の新居関所近くにある、元芸妓置屋を活用している「小松楼まちづくり交流館」。私は、当時8月4日に湖西市から指定管理を受託、管理運営している「NPO法人新居まちネット」の理事として仕事をさせていただいてきました。それが、この6月13日に開催された通常総会及び理事会において理事長に推挙され、お受け致しました。館内及び関所周辺のガイド、月替わりギャラリーの企画設営、集客イベントの企画運営、官公庁との対応などに関わっております。ご興味がありましたら、お立ち寄りください。約120年前の建物で国登録無形文化財となっております。祝日以外の月曜日休館で、9時から17時まで開館しております。入館料はいただいておりません。駐車場は、新居関所南側と東側にあり、どちらからでも徒歩5分以内です。(画像⑦、⑧)

 

 


(画像⑦)

 


(画像⑧)


2024.7.24 清八



38年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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