「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「落語のネタ帳・食べ物編…その7『京の茶漬』」

 清八でございます。

 前回のコラムからまだ真夏日は減っておりません。こんな暑い時には、映画館の中が一番と「ハリー・ポッター」「サンダーバード」「シュレック2」「スパイダーマン2」そして「東京原発」と立て続けに観ておりました。あるシネマ・コンプレックスでは、他飲食店からの持込み禁止とされておりますから、高いビールとポップコーンかホットドックを買って入るのですが、他飲食店からの持込禁止とするのならば、ジャンクフードでもかまわないので、もっと種類を増やしてもらうことはできないのかと、いつも考えてしまいます。

 8月10日発行の文春文庫「猫めしの丸かじり」(東海林さだお著)に「ポップコーンの癒し」というコラムがありました。「ポップコーンは映画館で食べることが多い。誰もが知っていることだが、映画館でセンベイを食べると音がうるさい。しかし、映画を見ながら何か食べたいという人は多い。映画館のほうも、観劇料のほかに何か売って儲けたい。食べても音のしない菓子がいい。そういうコンセプトで、1988年、セントルイスの映画業者によって開発されたのがポップコーンなのです。(ウソです)」ちなみに、私は他飲食店 からの持込みを禁止していない映画館に、缶ビールにカレーパンとツナサンドを持ち込んで観ております。

 ここまで書いてきてもテーマが定まりませんので、京都の落語を一席。この夏も京都は観光地としては独り勝ちのようです。7月の暑い暑い時期に「祇園祭」があって、貴船や鞍馬に行けば、涼しい床料亭があって、平日でも祇園に夕方行けば、浴衣や和服の女性が夕涼みしている風情があります。しかも、ホテルも旅館も夏期価格とネット割引で半額になっていたりして、この暑さでも観光客は減っていないんだそうです。ところで、大阪人というと「けち」「しぶちん」というイメージがありますが、本当は京都人の方が「しぶちん」です。もっとも、地元では、これを「しまつ」していると言いますが。ちょっとした料亭に行きますと、予約なしでは希望の料理を食べられないシステムになっております。経営者や板前さん側の理由は、お客様に合わせた食材を確保するためなのですが、「しまつ」ですから、捨てるモノを極力減らすというゼロエミッション都市という大仰な言い方をされる方もいらっしゃいます。

 さて、「京の茶漬け」という言葉があります。人が来ていろいろと話をして、ほんならもうおいとましますと、お尻を上げて帰りかけると「あのォ、なんにもおへんのどすけど、ちょっとお茶漬けでも」とこない言うんです。ほな、言われた方は、はきかけた靴をまた脱いで、「さよか、ほなよばれまっさ」言うてあがりませんな。「いや、どうぞお構いなしに」と帰ってしまいます。一ぺんや二へんなら忘れてしまいますけど、三べん、四へんとやられると、だんだんと腹たってきて、ある物好きな奴が、このお茶漬けを食べたさに、わざわざ大阪から京都まで電車賃を使うて行ったという話でございます。
「……今朝七時に家出ましてねぇ、二軒廻ってお宅が三軒目になっとりまして。そうですか、もうお昼でっか。……あの、この辺に、なんかちょっと食べるもんとってもらえるような店おまへんやろかな。うどんやでも。」「鈍な処どしてな、この辺は何にもあらしまへんのどっせ。あの新京極のほうへでもお行きやしたら、結構なお店がぎょうさんあんねんけど」「…こたえんなこれは。いや、えらいおじゃまを致しました。旦さんがお帰りになりましたらな、よろしぅお伝えを…」「まぁまぁ、せっかくお越しどしたのに、えらいお愛想なしですんまへなんだ。あの何にもおへんのどすけど、ちょっとお茶漬けでも」この嫁はんもクセになってるもんでっさかい、相手が背中を向けるなり言うてしもた。さぁ、この一言を待っていた、この男、「さよか、えらいすんまへんなぁ」と座り込んでしもた。しもたと思たけど、もうしょうがない。台所へ行って、おひつの底に心細う残っているご飯を一膳盛り付けて、たっぷりとお茶をそそいで、漬物と箸をそえて、「まぁ、何にもおへんのどっせ。まあ、お口よごしに…」「えらいすんまへんなぁ、ほな遠慮なしに頂戴いたします。……ああ、ほんまの茶漬けやな。おかずも無いがな。……、もう、しまいやで…、一膳飯ちゅうのはないで。こっち向かへんがな、こっち向け、こっち。……このお茶碗は良えお茶碗ですなぁ、これは。良え清水焼でんなぁ。こんなん大阪へ土産に買うて帰りたい。このお茶碗は、どこでお求めになりました」空の茶碗、向うへつきつけた。嫁はんのほうも、もう知らん顔はできしまへん。負けん気で空のおひつ、つき出して「これと一緒にそこの荒物屋で買うた」

 おつかれさまでした。

2004.8.24


34年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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