「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「夏の和食」

 清八でございます。

 先月は気象庁始まって以来という温度が各地で測定されましたな。東京都内では、熱中症で病院へ搬送するための救急車が途絶えなかったそうでございます。以前、これほどクーラーが整備されていなかった頃、寄席や演芸場での開口一番のあいさつが決まっておりました。「暑いですなぁ。7月に入ったとたん、この暑さでございますからね。これで12月になったら、どれだけ暑くなるかと思いますな」こんな、しょうもない事を言うて共感を得ていたわけでございますな。「ザ・ディ・アフター・トゥモロー」を観た後ですから、地球温暖化が本当に現実になってきているのではと考えてしまいました。亡くならはった桂枝雀さんのお得意のマクラにこんな噺がありました。あのノストラダムスのおっちゃんの本が世間を賑わしていた頃の事でございます。

 「もうすぐ人類滅亡の時がやってまいります。もう地球には住めないという事で他の星への移住計画が開始されます。もちろん人類全員が移住できませんから、役に立ちそうな職業の人から順番ですな。先ず、食べるもんが必要でございますから、お百姓さんが選ばれますな。ファーマーズ、こっち、こっち。そして、漁師さんですな。フィッシャーマンこっち、こっち。次に家が必要になりますから、大工さんですな。カーペンターズ、こっち、こっち。次に道具が必要になりますから技術者が必要ですな。エンジニアー、こっち、こっち……最後に残されるのがわれわれでございます。…あれ、何ですか。あれ、日本の噺家です。何する人ですか。何やわかりませんけど、座布団の上におっちんして右向いて左向いて一人で馬鹿な事を喋ってます。おーっ、それ何の役にも立ちませんね。連れていくの、もったいないですね。地球に残しておきましょうね。こうして、地球と運命を共にする職業でございますね」

 さて、今回はこんな噺から入ってしまいましたが、暑いですなぁ、とお伝えしたかったわけです。先月のこの酷暑の時に、四国の松山まで結婚式披露宴に出席してきました。友人の娘さんのお祝いでして、全日空ホテルでの教会結婚式でしたので、勝手に披露宴の料理は、フレンチだと思い込んでいましたら、何と、純和食のフルコースでした。瀬戸内の魚介類のお造りや天麩羅、焼き物、鯛めしなどがふんだんに出されました。いくら冷房のある宴会場といっても、調理場はたいへんであったと思います。当然、飲み物もワインではなく梅錦(愛媛の地酒)でした。最近の傾向としてレストランウェディングが流行っておりまして、フレンチやイタリアンのコース料理が多いです。当然、飲み物も発泡性ワインから始まって、白ワイン、赤ワインと展開されていきますね。これは、これで悪くはないのですが、本当に久しぶりに純和食のお祝い料理を経験してみると、私たちの大先輩や調理人さんたちが素晴らしい料理とおもてなしの方法を考案して、継続してきてくれたのかと改めて感心してしまいました。帰りは京都に立ち寄って「湯葉会席」をいただいてきたのですが、東京都内の酷暑以上の京都では、この季節には「鱧」があります。この鱧料理も和食だけではなく、フレンチ、イタリアン、中華といろいろと展開されているようです。みなさま、すでにご存知だと思いますが、浜松・浜名湖周辺で鱧料理がメニューに加わるようになってきました。私は、鱧大好き人間でして、以前、西武浜松店の地下の魚屋に鱧が並べられると、閉店間際に売れ残りを半額で購入して、よく食してきました。当時、浜松の方は殆ど鱧を食べられないので、毎日のようにおいしい鱧の落としが売れ残っていたのを記憶しています。もっといろいろな鱧料理を食べたくて、京都市内の専門料亭に通っていた頃もありました。近場で鱧料理が食べられるようになったのはありがたいのですが、もう少しリーズナブルになりませんか。冬の「ふぐ」についても同様なのですが、もう少しリーズナブルな価格設定にできませんか。関係者にはたいへん失礼な言い方ですが、今まで浜松・浜名湖周辺の方が口にしなかった食材です。高級感も大切でしょうが、普及・啓蒙活動を同時にしてくれませんか。「鱧」にしても「ふぐ」にしても、食材としての部位や調理方法で赤字にならないレシピができるはずですよ。お願いしますよ。

2004.8.2


34年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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