「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「落語のネタ帳・食べ物編…その4」

 お正月のテレビ番組では、全国のお雑煮の違いとか、お味噌の違い、をテーマにしていて、いろいろと教えられることがありますね。あるサイトでは、「お正月に外食して食べたい御馳走」というテーマがありまして、「豚のしょうが焼き」とか「キムチチゲ」なんて上位に入っていました。5万円の「高級おせち」よりは食べたいものかもしれませんね。

 さて、上方落語に「正月丁稚」という噺がありまして、ある商家の正月風景が描かれています。

 昔は水道ではなく井戸ですから、お元日の最初に汲む水を若水と言うて歌詠みをしましたな。
「新玉の年立ち返るあしたには、若やぎ水を汲みそめにけり」橙をほりこんで 「これは、お年玉でございます」旦さんに教えられた定吉が間違えまして、「目の玉のひっくりかえる明日には、末期の水を汲みそめにけり」言うて、橙をほりこんで、「これはお人玉でございます」
正月早々、旦さんに叱られております。

お店の者を皆集めまして、福茶をいただく時も、「旦さん、こら何でんねん」「これは福茶と言うて、この中には、昆布と梅ぼしが入って、めでたいもんじゃ」「旦さん、こんな大きな茶碗でお茶飲まして、後で、餅食わさん計略…」番頭が出てまいりまして、げん直しに句会が始まります。「大福や、茶碗の中に開く梅、とはどうでございます」「こら、めでたい」「大福や、茶碗の中も喜んぶ、 とはどうでございます」「これも、ようできました」「旦さん、わたいも…」「お前らにゃできやせん」「できまんがな、大福や、茶碗の中に昆布と梅ぼしが土左衛門」「もう、黙ってなはれ」「旦さん、そやけど、お正月のもん言うたら、みな謂れのあるめでたいもんばっかりやそうで…」「そうじゃ、そちなんかには、解りゃしょまいが」「わたいかて解かってまっせ。門口に立ってる松竹梅、あの門の飾りというものは、門口で会おう会おう(青々)と待つ(松)ばかり、というて、松は冬でも青々としてまんな」「おう、そういうことを言うてたら、叱られやせんのやがな」「あの竹は、男の気性を現したもんやそうでして、上から下までスーッと一本筋が通っておりまして、腹の中は何のわだかまりも無い、そやけど、ところどころ締めくくりの筋がある」「感心な奴やなぁ」「梅は女の操を現したもんやそうでして、一生その味を変えん、ほいで又粋なところがおまんなぁ」「おお、そうじゃ、そうじゃ」「お飾りにも、いろいろ謂れがございます。昆布が置いてあるのは喜びごとの絶えんように」「そうそう」「海老は、腰の曲がるほど長生きをするように」「そうじゃ、そうじゃ」 「数の子は、子孫繁栄やそうで。譲葉はこう親から子へ、子から孫へと、御身代を譲りなはる」「そうじゃ、そうじゃ」「消し炭は、皆寄って苦労するように。くし柿は家内中枕並べて患うように…」「あとがいかんのじゃ、あとが」叱られてしまいます。 皆で、お雑煮を いただく時間となります。「旦さん、このお正月の箸というものは、変わってまんな。この両端が細うて、まん中だけ太いの。これにも謂れがおまんのんで」「どこのおうちでも、初めから金持ちという身代は無い。初めは細い身代を一生懸命働いて、だんだん太らしていく。で、太ったところをぐっと握って離さんようにする」「あっ、なるほど。それからまただんだん細なってまんなぁ。ほな、又だんだん貧乏して、しまいには乞食でやすか」 又、 失敗してしまいます。「何、言うても叱られるねん…ウム…ウァー」「ちょっと静かにしてるかと思たら、今度は泣き出して、どないした」「わて、お餅をガッと噛んだとたんに、歯が欠けて…」「正月早々、歯が欠けるやなんて、げんの悪い」「あっ、旦さん、歯が欠けたと思たら、五十銭の銀貨が出てきました」「聞いたか、番頭どん。げんの悪いことばっかり言うてても、やっぱり子供じゃなぁ。いやいや、うちは小餅を丸める時に五十銭玉 を一枚ほりこんで丸めとくのや。誰に当るかしらん、と思うてたが、定、そちに当ったか。今年運がええで」「なんで」「なんでて、餅の中から金が出てきたやろ、金持ちという趣向や」 「しょうもない。金の中から餅が出てきたら金持ちやけど、餅の中から金が出てきたんや。 ここの身代、今年は持ちかねる」又、しくじります。

 丁稚・定吉のお正月レポートでございました。一年に一度、この噺を聞くと、日本人のアイデンティティが戻ってくると思うのは私だけでしょうか。

 余計な話ですが、アメリカ小児科学会が5日に発行した「ペディアトリックス」誌には こんな記事が掲載されています。米国在住の4歳から19歳の子どものうち、三分の一近くが毎日ファーストフードを食べており、1970年に比べ、子どものファーストフード 消費量は5倍に跳ね上がっているという調査報告です。調査報告によれば、ファーストフードを食べない子どもに比べ一日当り187カロリー高く、年間で最大2.7キロの体重が余分につく計算との事です。今でも疑問に思ってんのは、駄菓子屋で、おでんやお好み焼きを食べるのが悪く言われて、ファーストフード店で、ハンバーガーやフライドチキンを食べるのがそないに悪う言われなかった、あの時代は何だったのでしょうか。

  少し長くなりましたが、お付き合い、おおきに。

2004.1.6


34年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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