「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「落語のネタ帳、その15」

 清八でございます。
秋祭り、秋のイベントが続いてますが、道路交通安全法が改正されてもされなくても、飲酒運転は絶対に、絶対にしてはならないのでございます。落語国の世界では運転免許も自動車も登場しませんので、町内の若い連中が集まると、昼間からでも酒呑もか、というシチュエーションドラマが多いようですね。

その典型的な落語が、「寄合酒」なんです。「なぁ、おい、町内の若い連中がこれだけ揃うというのも珍しいさかいな。これから一杯飲もか」「あぁ、結構やな」「その代わり、言うとくで。今日は、俺が出しとこ、われが出しとこちゅう顔ぶれやあれへんがな。割り前やさかい、そのつもりでな」「割り前って、何や」「みな、一人前ずつ、割り勘というこっちゃ」
「そら、えぇけど、その割り前と言うのは、なんぼや」「大きな事、言うてもしゃあないな、一人、これだけや」「五本の指を出したな、まさか、五万円やなかろな」「あほか、料亭に行くのやあれへんがな、もっと下げ」「ほたら、五円か」「中をとれ、中を、ひとり五百円や」

こないして予算が決まったんですが、誰も現金を持ってませんな。しょうがないんで、一人一品ずつ、酒の肴を持ち寄ろうという「持ち寄り散財コース」に変更となりました。この、「持ち寄り散財」という言い方、死語になってますが、いい表現だと思いませんか。

「何や、持ち寄り散財って」「何でもかまへん。夕べのお菜の残りでも、今朝のお菜の残りでも、家にある物を、一人一品、持ってきたらええのや」「おい、持ってきたで、そっちぃ、持ってって」「何や」「鯛や」「おお、こら立派な鯛やな、高かったやろ」「さぁ、高かったやろなぁ」「高かったやろなぁ、って、買うたんと違うんかぃ」「買うたというわけやない」「ほな、貰うてんかぃ」「貰うたいわれると、つらい」「ほな、どないしたんや」「横町の角へ、魚屋が荷を降ろして、板台の中に、この大きな鯛が見えたんや。欲しいなぁ、と思うたら、金物屋の赤犬がくわえて走り出したんで、追いかけてな、赤犬を頭をどついたら、「くわん」ちゅうて、口から離したんで、犬の食わん鯛、皆で食わんか」「犬の上前、はねてきやがったな」

「おい、ちょっと、これ拾うてきたで」「何を拾うてきたんや」「大根、荷車にいっぱいや」「車にいっぱい、どこで拾うたんや」「そこの家の前や」「そら置いてあるのやがな、返しなはれや」「次は、何や」「鰹節が二本や」「これも、買うてきたんやあるまいな」「当り!」「当りないな、そんなもん、どないしたんや」「あの、子供が仰山、広場で遊んでたんや。その中に乾物屋の子供がいてたさかいな、ぼんぼん、これから鬼ごっこしまひょいな、わたい、鬼になるさかい、ぼんぼん、逃げなはれや。そやけど、鬼には角がいるさかい、お店に戻って大きい鰹節二本持ってきなはれ、言うたら、子供は正直でんなぁ、持ってきましたがな。その鰹節を二本、頭に当ててね、『ぼんぼん、咬もかぁ』言うたら、『おっちゃん、怖い』言うてお店へ帰ってしまいました。そのすきに、鰹節、懐に入れて持ってきてんやが、どや、皆でこの鰹節、噛もか」「えげつないなぁ、子供、騙したり、しないなぁ」

「それはそうと、最前から頼んでる火はどないなってまんの」「へぇっ」「へぇ、やないがな。あんた。そのかんてき(七輪)、最前からバタバタあおいでるけど、まだ、火がつきまへんの」「へぇっ、一生懸命、こうやって、火ぃ、いこしてまんねやけど、起きまへんのや」「あんた、かんてきの口は、開いてまんねやろね」「へぇ、なんぼ、わたいがアホでも、かんてきの口は、ちゃんと、こっちぃ向いて開いてますわ」「ほな、消し炭は」「消し炭も入ってまっせ」「それで、何で、火がつきまへんね」「さぁ、わたい、もう、目ぇ、くらくらするほど、このう団扇で扇いでまんねやけど、何で、火がおこりまへんね」「あんた、火の種は、どうなっています」

「火の種、と言うと」「…アホか、おまはんは、火の種も入れんと、つくわけがないやろ」
「ところで、酒の燗は、誰がやってんね」「わたいでやす」「わたい、あんた、えらい、酔うてるやろ」「あんたね、わたいは、この酒のお毒見役でっせ。そない、酔うほど、飲みますかいな」「ほな、湯呑で二、三杯ですか」「いゃ、そんな、湯呑で飲んだりしますかいな、その金たらいで」「そんな、あほな」

わぁわぁ、言うております。「寄合酒」の発端でございます。

2007.12.6


34年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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