「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

“せいて、せかんのやけど…回転寿司”

 清八でございます。

 「せく」というのは、「急く」と書きます。関西の言葉で、「急いでんのやけど、すぐ、とは言うてないのやけど、急いでんねン」「どっちやねン」という時によく使われる表現です。会社人間の方、とくに女性の方は一度や二度は経験されていると思いますが、社長さんや上司から、「これ、コピーしといて…」とか「これワープロしていて…」という用事がありますね。いつ、までとは言われなかったので、後回しにしておくと、5分もたたないうちに、「君、あれ、どうなってるの…」という催促、「急ぐのやったら、言うといて、もらわんと…」という経験ありますね。

 急ぐ時の食べ物として、ファースト・フードといわれているモノがあります。近頃では反対語としてのスロー・フードが現れてきていますね。ファースト・フードの代表とされてきたのが、ハンバーガーでありフライド・チキンですね。私、個人的には国内に登場して以来、食べたくない食べ物の範疇に入れています。決して、現在のEU各国のようにアメリカの攻撃に反対して拒絶しているのではなく、他の理由です。その理由を書くと、このコラムが続けられなくなってしまうので書きませんが、全く、個人的な理由です。

 さて、もともとの日本のファースト・フードの代表というと、「蕎麦」「うどん」です。「讃岐うどん」のブームでおわかりだと思います。今や、コンビニでの定番となっている「おでん」「おにぎり」もそうですね。「握り寿司」も日本のファースト・フードの代表でした。お寿司というのは、「握り寿司」のイメージが強いのですが、全国の郷土料理としては「ちらし寿司」「押し寿司」の方が多いのです。又の機会に書きますが、岐阜県が国内一の寿司王国であることを知っていましたか?これも個人的な好みですが、私は、「ちらし寿司」(大阪では、ばら寿司、岡山では、祭り寿司がありますね)と鯖寿司が大好きです。「ちらし寿司」「押し寿司」は、今でもそうですが、予約制であったり調理に時間がかかりますから、江戸っ子には不向きで、現在の「握り寿司」が生まれたという説があります。当初は、いまのような均一な米粒の量でもなく、俵型でもなく、片手で軽く握って、ネタを乗せただけの食べ物であったそうです。お店も屋台であったり、カウンターだけ表に出して売ったりと、まさに、ファースト・フードだったのです。

 チェーン店も含めて、回転寿司が全国レベルで増えています。百円均一から一貫千円まで、内容も多様化してきました。ある噺家さんから伺ったのですが、東京駅から新幹線に乗る時に、駅周辺の回転寿司に飛び込んで、2〜3皿つまんで、…という事が多くなった、と言うんです。確かに、デパ地下でお弁当や酒の肴を迷って時間をかけて買うよりは、早くて安いという理由です。それから、混んでる客席で、お弁当の包みをガサゴソするのは、格好良いしぐさではないし、おいしく感じられないという理由もあります。なにはともあれ、江戸時代のファースト・フードが現代のファースト・フードに戻っているという一席でございました。

2003.5.1


34年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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