「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「若手料理人に期待して」

 清八でございます。
 映画・演劇・音楽・古典芸能の評論家と同様なのですが、料理の評論で生活されている方々は、自身の好き嫌いではなく、希望と夢を持って多くの先輩から「伝えられる」技を身に付けようとしている発展途上者に個人的な嗜好を押し付けないでいただきたいと思うのです。たいへん失礼な表現になりましたが、「伝える」と「教える」とは違うということをご理解願いたいのです。前回の「ちりとてちん」は、こうして終わりました。

 実は、2月15日にシェ・モリヤで「若手料理人の夕べ」が開催され、お誘いに乗りました。シェ・モリヤ、トラットリア・ジージョ、レストラン水窪、ディボディバ、ル・シェル・ブルーの若手料理人と賛同したギャルソンたちによる一晩のディナーというご趣向でした。お誘いを受けた時に、軽くお遊びのつもりでお越し下さいと言われました。
スタートするまではそのつもりでした。それが、それぞれのオーナーから借りた厨房、食器、グラスを目にし、顔写真入りの立派なメニューを見て思いを変えました。アンケートカードにびっしりといろいろ失礼な感想を書いて店を後にしました。

 当日のアンケート項目にありました、「この一皿がうまくて、この一皿がまずい」というレベルではありませんでした。重箱の隅を突っつくようなレベルでは、何故、おしぼりを用意できなかったのかという一点も書かせていただきました。彼ら・彼女たちが事前の準備と当日の段取りまで期待と不安の中で何かをしようとしている気持ちは理解できました。当日の感想を一言で書くと、このイベントの目的が理解できなかったという事です。確かに、それぞれのお店の常連さんが多かったからかもしれませんが、いつの間にかワインが注がれて、一皿目が運ばれて、二皿目、三皿目、……、「ワインはいかがですか」、……四皿目、このパターンが七皿目まで続き、いつの間にか自由解散となっていました。

 顔写真入りの立派なメニューが添えられていても主催者側が適宜に挨拶し、料理人が交代にでも客席を回ってコミュニケーションを求めるべきだったのではと、今でも思っています。たくさんの人数を対象とされる、よくある「美食会」とか「グルメの夕べ」でしたら、ご感想をアンケート用紙にお書きください、で済むのでしょうが、この若手料理人さんたちの趣旨は違うと思いたいのです。たいへん失礼ですが、まだまだ、お客様にお出しできるようなレベルではなかったですよね。当日、厨房内におられた方は、全員、理解されていたと思います。スタッフ側のご好意であったと解釈しましたが、厨房内がすべて見渡せる席でした。私はいろいろなお店のカウンター席が大好きでして、それは厨房内での料理人さんたちの動きや料理のレシピ、調理器具、食器がよくわかるからです。そんな気持ちで厨房内を拝見していたからでしょうが、何か段取りがよすぎて、予約の人数分の皿に七皿とも配膳して、「今日の仕事は完了」といった感じを受けてしまいました。それで何が悪いんですか、と反論があると思いますが、勉強会(であるとして)なのだから、盛り付けのチェックをするとか、客席側のタイミングをはかるとか、もっと欲を言わせてもらえば、良い意味での緊張感とか汗と涙のバタバタ状況であってもよかったのではと思うのです。

 私は、毎日、毎晩、レストランや料亭を食べ歩いたり、お店や料理の「感想文」で生活 をしている身分ではありません。大阪や京都、沖縄の飲食情報を書いてきましたが、毎月のように行ってきたわけではありません。ただ、「食文化」に興味があって、新しいお店を見つけたり、自分にとって新しい料理を見つけた時に、味わってきただけの「食文化」一ファンです。私も、今でも「最近の若いもんは…」と言われ続けていますので、この若手料理人たちに、「まだ経験が足らない」とか「まだ考えが浅い」とか言えません。ただ、貴方たちより戸籍年齢が多いだけの特権でアドバイスさせていただきます。将来、オーナー・シェフを目指されているのかどうかは別にしても、飲食業界で続けていくのなら目の前のお客様を大切にして下さい。将来、どのような店舗・イメージをお考えなのかわかりませんが、常にご自身の360度ぐるりに神経を働かせて、配慮するような感覚を養って下さい。貴方ご自身が不可能なら、可能なパートナーなりマネージャーを採用して下さい。接客とは何なのか、サービスとは何なのか、戸籍年齢の若いうちに理解し身に付けて下さい。 例えば、以前書かせていただいた八日市市の世界一の料亭「招福楼」を体験して下さい。また、浜松からなら日帰り可能ですから京都・大阪の料亭を体験して下さい。フレンチ、 イタリアンを修行中の方も含めて関西のだしと薄口醤油の使い方を身に付けて下さい。好き嫌い、それぞれの師匠がどのような味付けなのかは関係ありません。貴方の味をどのように創っていくかです。そのために将来、絶対役に立つと思います。貴方たちの感性と、舌が若いうちに実行してみて下さい。これからも大切なお仲間で行動されるのも結構ですが、いつかは独立するはずです。独りで取り組まなければならない事を優先して下さい。

 当日、参加されていないたくさんの方には申し訳ない内容でしたが、「仕込み」の重要性を伝えたかったのです。

2005.3.14


34年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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