「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「噺家さんたちの食生活…その1」

清八でございます。

  このコラムで紹介していただいた5月18日の落語会も無事に終えることができました。新居町内での定期落語会は、春風亭鯉昇師匠の勉強会として20年51回続けています。毎回、私が前座を勉めさせていただきますが、二人で約100席、ゲストの噺家さんを加えると150席を達成しました。殆ど毎回、違う噺を演じられるよう勉強しています。今年3月に「浜松市ゆかりの芸術家顕彰」を受賞された鯉昇さんとのお付き合いは、彼がプロになって持ちネタが二席のみという頃からで、もう27年になろうとしています。と、こんな経歴の話はこのくらいにして、本題に入ります。

 初めて落語会を開催される現地のスタッフから、「開演前の食事(のせモノと言うてますが…)は何がいいでしょうか?」とか「打ち上げの宴席では、どんな料理がいいでしょうか?」と聞かれることがあります。鯉昇さんの場合は特殊なんですが、浜松出身なのに鰻がダメ、生の刺身がダメ、当然のように生寿司もダメ、という体質なんです。東京都内のお客様と銀座の高級寿司店で接待を受けた時も、かっぱ巻きとタマゴのみという人なんです。収入の少ない頃には、殆ど菜食とホルモン主義者で、食べられる野草をよ〜く、ご存知です。事前にお話できるスタッフにはワケを言って別メニューに代えていただくのですが、すでに準備されている場合が殆どです。噺家さんとか芸人さんは、用意された料理に対して、嫌いです、とか別の料理に代えてくれ、とは言わないように教え込まれています。お客様の気分を悪くするからです。ですから、食べたくない時は、今はお腹が空いていないからとか、ワキで立ち食い蕎麦しちゃって、とか理由をつけます。以前、私がマネー ジャー兼運転手兼前座で一緒に行動させていただいた時には、初日の昼と夕方が生寿司、その晩の打ち上げに鰻、二日目の昼と夕方に、また生寿司という状況がありました。これは、さすがに私も勘弁して下さい、と心の中で叫びました。東京都内のある会では、主催者が飲まれない方で、終演後、何もありませんが、と言うて「カレーライス」を出された事があったそうです。結局、ご辞退して、駅前の居酒屋でワリカンで打ち上げしたという後日談でした。特に高座に上がる前は、殆どの噺家(芸人)さんが軽いモノを食べられます。満腹にして しまうと緊張感が薄れてしまったり、声が変わってしまうからで、おわかりになりますよね。あの故・桂枝雀師匠も「すうどん」や「天ぷらうどん」を食べて高座に上がられておりました。

 話を戻します。私の会では、高座に上がる前は「梅うどん」とか「おぼろうどん」、夏は「ざるうどん」とか「そうめん」を用意します。打ち上げの酒の肴は、お寿司・天ぷら・ 刺身・鰻・海老フライ等はありません。ゲストの噺家さんには申し訳ないのですが、八丁味噌のおでん・ぶり大根・新玉ネギのスライス・鰻の肝焼き、最近ではトムヤンクン・陳マーボー豆腐・ゴーヤーチャンプルー・豆腐よう、といった内容で、無国籍の居酒屋メニューになっています。そのためか、アルコールもビール・日本酒から泡盛・芋焼酎・紹興酒 に変化してきました。実は、鯉昇さんは若い頃に台湾とタイに通われておりまして(と言っても落語の仕事ではなく、お茶や仏像の買い付けのお供ですが)、中華料理とエスニック料理が大好きなんですよ。

 こんな宴席がいつまでも続けられるよう、お互いに食生活に注意して健康でいたいと強く願っております。

2003.6.20


34年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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