「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「異論・反論・オブジェクション 鰻と穴子」

 清八でございます。たいへんごぶさたでござりました。このコラムで書かせていただいてから10年半以上になります。初めて自己紹介文を書きます。昭和29年3月生まれで、合併前の新居町の関所跡前で生まれ育っております。これまで関西の食事情や飲食店の情報を取り上げておりますが、暮らしたことはなく、仕事や旅行、情報収集で滞在してきただけです。新居町は東西の交流の地であったためか、東西の文化が混在していた町でした。蕎麦・うどん・きしめん、鰻の腹開き・背開き、赤味噌・白味噌・豆味噌、濃口醤油・薄口醤油、田楽・おでん、などなど幼少期から東西の味で育てられました。しかも、私の実家は当時の中心街にありましたので、子供の足で歩いて10分以内に八百屋・乾物屋・魚屋・鮨屋・肉屋・惣菜屋・ラーメン屋・駄菓子屋・和菓子屋・塩屋・アイスキャンディー屋があり、両隣が酒屋さんと洋食堂さん、斜向かいが煎餅屋さんでした。同年代の方と子供の頃の話をすると、羨ましがられます。

こんなプライベート情報は読みたく無いとは思いますが、もう少しお付き合い願います。実家の裏に井戸がありました。当時の塩水のような水道水(失礼)よりはたいへんおいしかったようで、町内の方たちが毎日立ち寄っていたようです。天然の鰻漁師さんたちは漁があると、この井戸端で割いて、隣の酒屋さんの裏で枡酒を飲んで帰られていたようです。井戸の使用料のつもりだったのか、時々、割いてから半助(鰻の頭)とか肝をいただきました。また、この昭和30年から40年代が浜名湖での養鰻事業が拡大されていた時代でもあり、商品に向かない養殖鰻も頻繁にいただき食卓にあがっていました。昭和50年代、60年代、平成になってからのお中元・お歳暮は木箱でいただいたこともあります。

画像①

白焼き(画像①)を山葵、にんにく、しょうがと薬味を代えて酒の肴にし、鍋に入れて蒲煮状態にしたり、固くなったら細かく刻んで混ぜご飯にしたり、今から思えば、贅沢な食べ方をしてきたものだと思います。そうそう、戸隠で毎夏オートキャンプ生活をしていた頃、到着してテントとかまど設営の初日は、浜名湖鰻の白焼きを持っていって、マキで炊いたご飯での鰻丼が定番で他のテントサイトからは羨ましがられたものです。このような生活でしたので、標準的な浜松っ子の方の20倍は食してきたと思います。

 さて、ここから「異論・反論・オブジェクション」です。昨年、急に鰻が高騰し、全国の鰻専門店さんが老舗も含めて廃業が続きました。昨年、高騰した理由として「シラス鰻」が捕れなくなって高騰、その影響で問屋も仲買いも料理屋も上げざるをえなかったとマスコミ報道でも、お店でも伺いました。個人的には、昨年の1月から稚魚が高騰したのに、なんで4月から消費者に転化されたのか不思議だったのですが、業者の言い分としては昨年からではなく、もう10年前から高騰を続けてきた。これまで赤字でも上げなかったので、さすがに上げさせていただいた。しかも、養殖の場合は、時価ではなく愛知県の一色町の養鰻組合さんが全国統一卸価格を決められる業界ルールになっているからなんだそうです。テレビのぐるめ番組では、鰻の代用丼特集が続きましたね。厚揚げ・豆腐・はんぺん・レンコン・茄子・鶏肉などなど、代用レシピがたくさん登場しました。今年も、代用で食されていますか。これも個人的な提案なのですが、関西のように端材まで使った鰻料理では駄目なのでしょうか。

画像②

一昨年、滋賀県余呉町の「徳山鮓」さんでいただいた天然鰻の一本白焼き(画像②)は、半助(頭)から尻尾まであり、それを実山椒のみで食したのです。日本酒の肴としては最高レベルだと思いました。関西では、半助(頭)と尻尾部分だけの丼とか、蒲焼のたれだけの「たれ丼」とか、半助と焼き豆腐を煮込んだ「半助豆腐」「半助丼」(画像③)とか、いろいろと工夫できるのではないでしょうか。

画像③

浜松っ子は江戸っ子だから、「頭」を嫌うとか「端材」はお店では使えないという理由は十分に理解できます。それなら、ファーストフードやジャンクフードの端材は、いかがなものですか。鰻の町・浜松で全国へPRされていて、わざわざ新幹線まで使って来られたり、出張のランチに食する鰻丼が2700円だったり、駅弁が2100円、勘弁して欲しいと感じているのは私だけではないと思います。東京や大阪のように消費者の数、購買層が異なるからという理由も理解できますが、立ち食い店やテイクアウト専門店、ワンコイン店が存在していて欲しいです。

画像④

これまでの代用レシピに無理を感じられておられるのでしたら、何故、「穴子」を活用されないのでしょうか。「鱧」ではありません。「穴子」(画像④)です。鰻よりも供給量が確保できます。白焼きも蒲焼もできます。湯引きでも刺身でも鰻より処理は楽です。定番の天婦羅、穴子の炊き込みご飯、フライ、八幡巻き、昆布巻き、柳川風鍋、中華でもイタリアンでもフレンチでも、エスニックにも展開できます。100年間築き上げられた文化とシステムは大切ですが、消費者側としては、これ以上の価格設定は、ご勘弁願いたいのです。お店での提供に無理があるなら、ご家庭での鰻代用として「穴子」料理を展開してみませんか。

 

2013.7.18


34年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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