「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「落語のネタ帳、その17」

 清八でございます。明けましておめでとうさんで、ござります。

 一昨年、昨年は「偽」「変」と、続きましたので、プライベートの年賀状では、「厄払い」の口上を書かせていただきました。読者の皆様にも「良い年」になっていただくよう、この落語ネタです。

落語の方では、旧暦を使うてますので、新暦の「節分」が年越しにあたります。お含みおき願います。節分の晩に「厄、払いまひょ」と叫びながら町々を流して歩くんですな。厄年の方がいてはる家やとかゲンをかつぐ商家で呼び止めて、口上を述べさせて銭や豆を与えるというご商売があったんやそうでして。町内で世話好きな甚兵衛はんに「厄払い」の口上を紙に書いてもらいまして、初めて、商売に出たんですが、素人の悲しさ、うまくいきませんな。夜、遅うなって、厄払い、厄払い、と大きな声を出して歩いてますと、ある商家で呼ばれました。「お〜い、厄払い」「何ぞ、用か」「何ぞ、用かて、おまえ、厄払いやろ」「えぇ、厄払いです。おまえとこ、家族何人か」「うちとこは上下あわせて三十人じゃが」「それやったら、新作のええのんで払う、芝居づくしの、何やかんやで、まとめて払うわ」「まとめて払う。気に入った。ほな、まとめて払ぅてもらおか」「へぇ、その前に出すもん、忘れてるで」「何や、その出すもんて」「金と豆」「後でやるがな」「いや、わたいのは特別の厄払いで、後払いてなこと言うたら、厄払わんと、厄がわーっと集まるように言うて帰る」「そんな脅迫やないか。あげる、あげる」「えーっ、それでは、ただいまから厄払いの始まり、始まり」「サーカスの口上やないか。ちゃんとやってや」「あの、全員そっちの部屋に入って、障子閉めて、絶対出てきたらあきまへんで」「何で、こんな事するねん」「えーと、こら、墨薄いな」「何、墨、薄い」「すんまへん。ちょっと障子開けて。光が漏れるように。しかし暗いね。何ワット、使うてまんの。四十ワット、百ワットに変えなはれ」「何を言うとんのや、厄払いやってや」
「やります。やります。や、や、やはらめ……てたいな、てたいな」「何が出たいんや」「いや、このまま、この家、出たい」「そんな事言わんと、やってや」「やりまんがな。やーら、め、てたいな。やーら、めてたいな。めでたいことで払お、めでたいことで払、おなら」「そこ、すっと言えんか」「おなら、すっといったら臭いで」「払おうならや」「そうそう」「何が、そうそうや。ちゃんとやってや」「つーるーは、か」「えらい鶴長いな」「つるは首が長いさかい」「つーるーは、十年」「何」「つるは十年」「えらい鶴の寿命短いな」「これはつるの若死」
「そんなゲンの悪いこと言いないな。鶴は千年やろ」「千年、千年、十の上のシャッポが飛んでたわ」「鶴がシャッポ被るんか」「これがいわゆるつるくハット」「アホなこと言うてんと、ちゃんとやってや」「つるは十年、カメ、一ヵ年」「どついたろか、ホンマに。亀は万年やろ」
「あぁ、一とカが離れすぎてまんねん。とこさっくせえな。とこさくせえ、浦島太郎ちゃんは、たろちゃんは愛ちゃんを嫁にする」「何を言うてんのや。おかしい思うたら、そんな紙読んで。それも、ちょっとも払うてへんやないか。おまえ、なんや、新作のんで払う。芝居づくしので払う。これやったら昔からあるのと一緒やないか。えー、めでたいな、めでたいな、めでたいことで払おなら、鶴千年の亀万年、東方朔は九千歳、浦島太郎は八千歳、あれやろ」「ちょっと待って、調べる、調べる。そうそう、そのとおり、おうてる、おうてる」「三浦の大助百六っや。いかなる悪魔が来ようともこの厄払いがひっつかみ、西の海へさらり、厄払いまひょ、これでしまいやろ」「そう、そのとおり、ありがとう、さいなら、ごめん」「旦さん、番頭のわたいに払わせて帰ってしまいましたで」「いやいや、年越しの趣向じゃ。わしゃ、ここで腹抱えて笑うてたで」「あっ、旦さん、雨が降ってまいりました」「厄払いの後に、雨に降られるてな、今年はええ年やないな」「いえ、旦さん、そんなことおまへんで」「そうかえ」「へぇ、昔から降るは千年と言うまっしゃろ」「おぅ、降るは千年な」「へぇ、雨は万年でございます」

 この清八が、皆さんの厄をまとめて払わさせていただきます。
厄払いまひょ、厄払いまひょ、めでたいのんで払いまひょ。

2009.1.1


34年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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