「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「落語のネタ帳・食べ物編…その1」

 清八でございます。

 雨が降ったら、じとじとするし、雨が降らなんだら、真夏日になるし、うっとうしい日々が続いておりますので、こんなお話はいかがでしょうか。このコラムのタイトルを決める時に管理人さんと落語に使われている食べ物の演目について、いろいろと検討させていただきました。結果、「ちりとてちん」が採用となったというわけなんです。以前は、落語の演目が日常会話の中で普通に登場していたようです。いつ頃なのかわかりませんが、特別な用語になってしまったようです。

 「まんじゅう怖い」って、おわかりになりますか。 友だち仲間が何人か寄りまして、「好きなもん」の尋ね合いをします。「誰が何と言うても、酒」から始まって、「ぜんざいにハチミツかけて食う」ヤツから「レンコンの天ぷらの穴の揚がったとこ大好き」なヤツ、「とれとれの鯛のブツ切りを今炊きたての丼のご飯へ乗せて、タマゴの黄身だけ、わさびの上等をシュッとすりこんで、上等の浅草海苔を裏表こんがり火にあぶってバラバラバラッと散らして、お醤油をサーッとかけて、ザーッとかきまわして、ガサガサっと、18杯ほど食べる」のが好きと言う化け物のようなヤツまで登場します。逆に「嫌いなもん」の尋ね合いが始まります。「ヘビ、ムカデ、ミミズ、クモ、 蟻、でんでん虫…」(蟻が怖い理由だけ書いておきます…蟻というのは歌にもありますように、「蟻さんと蟻さんこっつんこ」頭と頭を合わせてコチョコチョとお話をしてる時に、ひょっと自分の悪口を言われていると感じている感受性の強い男が居てるんです)

 いろいろと登場しますが、どこの町内に一人はおりますわな、気取り屋でイヤミ言いの男、本名・佐藤光太郎氏が「饅頭が怖い」と言い出します。そこで、仲間がプロジェクト・チームを結成します。皆がお金を出し合って、町内の甘い物屋で、これぞ饅頭の中の饅頭という、うまい饅頭を取り揃えます。高砂屋の上用饅頭、橘屋のへそ、カンセン堂の栗饅頭、最中、きんつば、回転焼き、田舎饅頭、そば饅頭、カステラ饅頭、水饅頭…いろいろと持って、布団かぶって震えている男の長屋に放り込むと…「キャー、バタバタ、キャー、バタバタ、家の中をグルグル走り廻る」のを長屋の外で楽しもうというイベントを企画したのですが、長屋の内はシーン。

 「光っつぁん、死んだんちゃうか?」「饅頭で死ぬか?」「そら、死ぬかもしれへんで、あれだけ怖がってたんや」「お前や、お前、お前の投げた栗饅頭が光っつぁんの眉間に当って即死や」「そんなアホな」「待て、待て、逃げなや、こらえらいことになったぞ、近所の者が警察に通報するわな、巡査が来よるな、刑事が来よるな、署長はんが来よるな、新聞記者も来よるな」「明日の朝刊に載るぞォ、友だち共謀して、佐藤光太郎なる男をば、饅頭にてあん殺すと」。

 さて、内の光っつぁんは、「誰や、水饅頭持ってきたんわ、顔に当ってべちゃべちゃや、饅頭怖い言うたら、こないに持ってきてくれて、ごっつぉはんで…」「光っつぁん、饅頭食うてるで…、あんたのほんまに怖いもんはなんやねン」「濃いィ、お茶が一杯、こわい」…こんな噺でございます。

 東京と関西では、好き嫌いの比較や饅頭の種類や演出が多少異なりますが、本筋は同じです。私は好きな噺の一つで、結構、演じてきました。すでにプロの噺家さんに提供してあるのですが、こんなギャグを入れています。朝刊に記事が掲載された後、「この事件が、ある有名な作家によって小説になるな」「ほんまか?」「アンガサ・クリスティ原作…饅頭殺人事件言うてな」

 お時間でございます。

2003.7.8


34年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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