「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「対面商売?をしなくなった、飲食業」

 清八でございます。
 ごぶさたでございました。このコラムを掲載させていただいた頃、その12から14まで、連続して「異論・反論・オブジェクション、待ってます?」を続けたのですが、私のところまではリアクションは伝わってきませんでした。
その12では、カツ丼・ざる蕎麦・ラーメンがいつの間にか昼食としては手が出ないような金額となりB級グルメという造語によって持ち上げられてしまったことへの異論を書かせていただきました。
その13では、「飲食業」は「清掃業」ではなかったのか?を書かせていただきました。
そして、その14では、飲食店での喫煙について書かせていただきました。
もう10年も前の状況ですので、現在では法律や条令も変わっていますし、価値観も変わってきていますから、この三つの内容は改善されているのかもしれません。もし、ご興味がおありでしたら、バックナンバーを覗いてみて下さい。

 

さて、10年ぶりに「異論・反論・オブジェクション、待ってます?」を復活してみます。

先ず、再開後の第一回目のテーマは、「飲食業は、対面商売ではなくなったのか?」です。

サービス業や飲食業のセミナー・講演会では、以前はこの「対面商売」がよく登場したのですが、すでに「死語」になってしまったのかもしれません。この10年間ではコンビニエンスストアもファーストフード店も大きく増加はしませんでしたが、20年間では約倍増している統計値があります。
外国人向けの観光サイトでは、日本のコンビニやファーストフード店は他の国よりも親切で礼儀正しいとあります。ファーストフード業界の説明会の資料には、日本人の持っている「細やかさ」と「礼儀正しさ」でお客様に奉仕し、ユーザーニーズを素早く商品に反映させることで成長していく。と、あります。以前から言われてきたように、「マニュアル対応」の域を出てはおりません。小噺として定番になっているネタがあります。
子ども会のイベントでお昼になったので、ハンバーガーショップへ代表が買いにいきました。「いらっしゃいませ。何になさいますか。」「チーズバーガー20個とダブルバーガー20個……」「はい。ありがとうございます。こちらでお召し上がりですか。」
ある会員制のリゾートホテルでのチェックインの時の話もあります。初めてなので、カウンターにいるスタッフに、「すいません。エレベーターはどこですか」「はい、お客さま。右手方向にまっすぐです」と言って、親切に右手を出して案内をしたそうです。普通、その方向に進みますでしょ。ところが、スタッフとお客はお互いに顔を見合わせておりますので、逆になるわけですね。でも、マニュアルには、「右手方向にまっすぐです」と、書かれて、教育されているんですね。

 レストランや割烹がオープンキッチンに変わってきましたね。デパ地下でも小売店でも、 在庫を減らしているので、お客側の商品ケースに殆ど全部を入れて、うちの店にあるものはこれで全てです。と、いうような売り方が一般的になっておりますね。
チェーン展開の居酒屋、ファミレス、回転寿司……、メニューが豊富になり、特に日本では画像付きのメニューなので、本当にわかりやすくて、あれもこれも頼んでしまいたくなりますね。どこが、異論なのですか、と、突っ込みを入れられると思います。私が斜めに見ているのかもしれませんが、はたして現在の飲食業は「対面商売」なのでしょうか。
あるデパートの地下のワイン売り場で「あのぅ、3000円までで、ローストビーフに合うフランスの赤ワインが欲しいのですが」とお客様が尋ねたとしますね。その売り場のスタッフはどのように答えたでしょうか。あるショップでの実例ですが、「いま、この棚には、これだけのワインしか置いてありません。フランスの赤ですと、この1980円と2980円の二種類しかありません。どちらになさいますか。」これで、買いますか。
チェーン店の居酒屋さんでは、120分飲み放題・宴会コースが多いですが、60分過ぎには、「もう、これで料理は終わりです」とか「お食事、どうなさいますか」とか聞いてきますね。

 

対面商売

 みなさんのご存知の商店街、飲食店を思い浮かべてみて下さい。長く続けられているお店は、お客様の顔を覚えていませんか。ご常連になればなるほど、今までどのような買い物をされていたのか、食されていたのかデータが残されていますよね。パソコンの中にではなく、 オーナーシェフとかマダム、マネージャー、店主の頭の中に。大学教授や商工会議所からのアドバイザーに来ていただいて、売上げとか顧客データを分析してグラフ化していただいたり、経営理論をお伺いしなくても、おわかりになられるのではないでしょうか。お店をオープンされた頃の気持ちを思い出してみて下さい。
「飲食業は、対面商売だったのではないでしょうか」

 おつかれさまで、ござりました。

2012.3.6


34年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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