「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「落語のネタ帳・食べ物編…その10」

 清八でございます。
 歓送迎会、お花見とお酒をいただく機会が多くなってきましたな。お酒の好きな人は寝ても夢の中でも飲んでるようでして。
  ある男、女房が留守の時に、一升瓶を三本いただきました。まだ少し寒いのでお燗をつけようと七輪で火をおこしている間に夢が覚めてしまいました。「しもた、これやったら冷で飲んどいたら良かった」こんな小話があります。

最近テレビの番組では放映しなくなりましたが、早食いとか大食会というイベントがあって、あれ、肥満体より痩せている方のほうが新陳代謝が活発なんで勝つのやそうですな。
大食というと、相撲取りはレベルが違うんやそうでして、食べ放題やバイキングのお店では断ってもええのやそうですな。札幌場所の時に、札幌ビール園にある部屋の関取さんたち10人が入って、その日は暖簾を降ろしてしもたてな話が伝わっております。お肉も生ビールも当日分が無くなってしまったんやそうです。  会社でも町内でも、「俺が一番酒が強い」という方がいてますな。大学生の歓迎コンパや新入社員歓迎会で「飲め、飲め…」とやって救急車で運ばれたり、それから宴席が嫌いになってしまったり、さまざまなエピソードがありますわな。気をつけないといけないのは、「最近の若いもんは…」ではなく、いろいろなアルコール飲料が入手しやすくなったこと、ビールでもアルコール度数が高くなっていること、特に発泡酒が登場してから、発泡系の炭酸度が高くなっているということに留意して下さい。創って、売っている側の責任もあると思うのです。

 ある酒好きな旦那どおしが、いつもの料亭で待ち合わせ。今日のテーマは、尾張屋の旦那が手に入れました一升入れの金無垢の杯。近江屋の旦那と二人で試そうと持ち込んだのですが、二人ともよる年波で二、三合しか呑むことができません。
「せっかく手に入れたのに使えないのは、もったいない。誰ぞ、一気に呑んでくれる者はおらんやろか」
「それやったら、供の権助やったら、これに四杯や五杯は空くやろうと思います」
「あんた無茶言いなはんな、これに四、五杯なんて、これ一杯が一升でんねや」
「あいつならそれくらいはやると思います」
「ほんまにやりますか。ほな、賭けましょか」
「おう、何を」
「来月の有馬温泉二泊の費用賭けましょか」
話がまとまりまして、奉公人の権助を呼びます。ところが、当の権助は「わしゃ五升てな酒まだ呑んだことがないで、わからんな」言うて、どっかへ行ってしまいました。
しょうがない、この賭けはなかったことにして二人で少しずつ飲もうとプランを変えようとしますと、権助が戻ってきてチャレンジするということになりましたな。一升入れの金無垢の杯で、一杯、二杯、三杯、四杯、立て続けに呑んでしまいました。
「これは、見事やな、さぁ、もう一升やで」
「これ一杯かえ、これ空けたらええんじゃな。くぃくぃくい、呑んだぞ」
「はぁ畏れ入った、負けました負けました」
「これだけ見事に呑めるのに、おまはん、ちょっと考えさせてくれちゅうて、どっかへ行ったが、あの時に酒の呑める薬でも飲んできたんか、それともまじないでもしてきたんか、教えておくれ」
「あぁ、あれかぃ。いや、わしゃ本当に五升てな酒呑んだことないでな、呑めるか呑めんか、そこの酒屋で試しに五升呑んできたんじゃ」

 「試し酒」の一席でございました。

2005.4.4


34年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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