「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「世界一の料亭」

  清八でございます。今年もよろしくお願いします。

 昨年はクリスマスディナーを我慢して、12月26日に世界一の料亭に行ってきました。 滋賀県八日市市の「招福楼」本店です。今回で三回目なのですが、何と、初めての夜懐石でした。東京丸の内店には、いろいろなマスコミ取材が入っているようですが、この本店は徹底して取材拒否されている料亭です。メニューもお品書きもありません。一年12ヶ月、月代わりの内容だけです。もし、同月内に訪れることができる場合は、当然、前回とは内容を代えてくれます。関西の財界の接待料亭で、いつでも最高点を維持し続けている正に大人のための日本一の料亭です。当然、世界一の料亭となるわけです。こっそりと料理の写真を撮影することが恥ずかしくなる雰囲気がありますので、申し訳ありませんが映像はありません。なるべくわかりやすくレポートします。

 米原駅から近江鉄道に乗り換えて、約40分、八日市市に到着します。駅を出て、右に曲がり徒歩三分で招福楼の看板と門が見えてまいります。門から砂利道を歩みだすと、その音を待っていたように半纏を着た下足番さんがお迎えに出てきます。案内されて行くと玄関、下足を脱ぐと、お部屋係の仲居さんがお迎えに。お部屋に通されますと、12月ですから暖房が入れられています。 この温度設定と風量が絶品の間です。(夏には、自然の風とクーラーの風をうまい具合に調整してくれます)硝子格子の外は日本庭園で借景となっております。 大きめのおしぼりと茶湯が運ばれ、時候の挨拶があり、「お飲み物は、どないします」てなお誘いに「そんなら、お酒を」てな事を言うと、「寒おすよってに、燗つけまひょか」「はい」。待ってますと、その間にお庭に先ほどの下足番さんが灯篭を持って現れ、本当にいい間合いで三つ程音がしないようにゆっくりと置いていかれました。その頃、突き出しとして蟹の身の小鉢が運ばれ、若女将から食前酒を杯にいただきます。先ほど頼んだ熱燗と同時に「みぞれあん」が置かれます。たっぷりの大根おろしの中には、蕪と湯葉、オコゼとその肝が入っていました。これで体がホクホクになった頃に、「お造り」です。赤貝と烏賊、鰈でした。次に「焼き物」として、まなカツオにゆべしが添えられて出てきました。次に現れたのが、細かな氷を敷き詰めた器にこれでもかと並べられた酒の肴でした。「たらの白子」「荒巻鮭」「海鼠」「このわた」「干し柿」、初めてこんなおいしい「海鼠」と「このわた」を味わいました。次の「焼き物」は「海老」と「海老芋」「鴨肉」でした。「鴨肉」には葱が乗っていました。素晴らしかったのは、この次に「口直し」として冷たい汁物が出されたのですが、これが何と、ナメコと白玉のお出しにスダチが入っていました。さっぱりした後に、メインの「ぶり大根」が登場したのですが、上品なお出しでどれだけ時間をかけたらこれだけ柔らかくなるのかと信じられないほどの「ぶり」と「お大根」でした。お出しもおかわりして残らずいただけました。料理は以上で、炊きたてのご飯と車麩の赤だしとお漬物となります。それでは、お茶をお持ち致しますと仲居さんと入れ替わりに、大女将が練りきりのお菓子と御薄を持って現れました。いやらしくない程度に抹茶茶碗の紹介があって、御薄を飲みきりますと、デザート(水菓子)が運ばれます。以上が今回、いただいた税抜き・サービス料抜き25000円の内容です。

 私は、この内容に高いとは感じません。心地よく酔って、お勘定を済ませて玄関へ向かうと、下足が揃えられていて、下足番さん、仲居さん、若女将さん、大女将さんのお見送りが続きました。サービス業、飲食業の方はもちろん、製造業の方も研修費だと思って一度体験してみてはいかがでしょうか。「接待」「接遇」「サービス」とは、必ず、感じるものがあるはずです。

蛇足ですが、この料亭は全席禁煙です。本店は、敷地内禁煙です。
ご興味ある方は、次のホームページをご覧下さい。
http://www.shofukuro.jp/

2005.1.5


38年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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