「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

 

「2023年、コロナ自粛中のエトセトラを報告?します 4月篇」

 

 清八でございます。遅くなりました。毎月、「食」に関する書籍・漫画・DVDなど、主に中古品を探しては買い求め、読んだり、観たりして学習しております。

それでは、4月分を報告させていただきます。

 

■「井川直子著 シェフたちのコロナ禍 道なき道をゆく三十四人の記録」文芸春秋
(2021.5.15)中古本

 2020年12月からの「ちりとてちん」No.184からは、「コロナ自粛?」を口実に、「食」に関する自宅学習内容を報告してきました。この書籍は、やっと出会えた一冊でした。2020年4月7日、一回目の緊急事態宣言が東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡に発令されました。この著者は、翌日から都内の飲食店のオーナーやシェフ・板前さんたち34人、50日間に渡って取材、何を考え、何を選択し行動して顧客、スタッフ、料理、仕入先を守ろうとしたのかをまとめられた渾身の記録です。当時は、ウェブサイトに毎日書かれていました。出版にあたっては2020年10月に、追加取材をされています。フランス料理のグランメゾン、夫婦で営むイタリア料理店深夜型の居酒屋、横町の老舗からオフィス街の新しい店、下町、都心、住宅街などエリアや料理ジャンルを広げての取材であったようです。

 先ず、恵比寿の「TACUBO」の田窪オーナーシェフは、「縮小して店を開ける選択」をされました。その理由の一つが「店を閉めるのが怖かった、という気持ちもありました。お店って、たとえお客さんが少なくても、開けている限り空気が動くんです。生きている。僕、定休日の店の止まっている空気が好きじゃなくて。夏休みなど自分の意志なら別ですが、もし何かに負けて止めてしまったら、再開して時にゼロになってしまう気がしたから。」

 北参道の「シンシア」の石井シェフは、「一か月閉める選択」をされました。その理由の一つが「何より、やはり人の命には代えられない。安全、健康が最優先です。フランスに住む仲間の料理人などから、その深刻な状況を聞くたびに、日本がいつ同じ道を辿ってもおかしくないと思っていたので。」

 港区三田の「コート・ドール」の斉須オーナーシェフは、「営業短縮、ディナーは二十時までの選択」をされました。その理由の一つが「答えはないですよね。正解は僕もわからない。僕らは一組でもお客さんが予約を入れてくれる限り、開けている。それだけです。衛生管理は普段からしっかりしているので、いつもと変わらずに(コート・ドールの厨房は一日四回、シェフを含む全員で掃除をし、鏡のように磨き上げられることで知られる。)

 この書籍は、正にコロナ禍、飲食業界が自らされた検証の貴重な記録です。私の戸籍年齢内の時代、記憶の中では、その時期の検証をしようとしない、この日本、政府ぜひとも、中学、高校の図書館には在庫にして、永久保存または学校教材に活用していただきたい一冊です。(画像①)

 


(画像① シェフたちのコロナ禍)

 

 

■「別冊太陽 No.14 SPRING’76」小学館
(1976.3.25発行)中古本

  ゴールデンウィーク前、浜松市内でのランチの後、いつもの古書店で見つけて購入した一冊です。47年前の「別冊太陽」なんです。100円でした。この号のテーマは、「日本のこころ 料理」、日本料理の歴史項は、王朝の料理から江戸時代、そして文明開化後の洋食、上方と江戸の料理など当時の資料を編集されていました。特別企画の一つ目は、湯木貞一さんによる「春の吉兆」風景、二つ目は歴史に残る名料理再現として、天正十年五月十五日、「家康を饗応した信長の安土献立」、天正十八年九月二十一日、利休好みの四畳半の間でひらかれた茶会でもてなした「利休の懐石」。文化・文政の頃、江戸の名亭「八百善」で供された会席料理。明治末頃、東京浅草公園「花屋敷」での献立からの会席料理、そして江戸時代、お花見の重詰、これらの写真は、たいへん貴重な資料になっていくと思います。

 そして、特別付録として、安政三年十二月十七日、彦根で井伊宗観(直弼)が自ら点てた雪中会の自筆水屋帳の一頁、江戸時代・化政以降の料理見立番付「魚鳥料理仕方角力番附」、江戸時代前期に大坂・木津川河口の港、三軒屋にあった遊里の賑わいを描いた十局の「川口遊里図屏風」の三点がありました。当時の肴は、鯉・鰹・鯛がトップ3であったことがよくわかりました。(画像②、画像③)

 

 


(画像②別冊太陽)

 


(画像③別冊太陽)

 

 

■「水越康介著 応援消費」岩波新書
(2022.7.20)中古本

 2020年からのコロナ禍で、「ふるさと納税」、飲食店や寄席、映画館などの継続支援の一環としての「クラウドファンディング」が増えております。大震災や台風・大雨、豪雪被害地への「復興支援」など、阪神・淡路大震災頃から「応援消費」という言葉が生まれ、社会に浸透してきたようです。私自身、東北大震災以降、2016年から三年間、東北を定期的に旅行し、沿岸部も含めて現地を歩き、現地の居酒屋で現地の方々と、当時の最新の情報を入手した経験があります。「ちりとてちん」バックナンバーのNO.145、146、151、152、158、159、160、165、166、167に詳しく書かせていただきました。この著者は、阪神・淡路大震災のあった1995年からはインターネットや情報技術の発達・普及が確かに応援消費を後押ししている、と書いている。あとがきでは、「……コロナ禍もまたそうした困難の一つであり、私たちの社会は影響を受けている。最近になって、自宅の近くにあってよく通っていた料理屋が閉店してしまった。小さなことかもしれないが、コロナ禍でも、いやコロナ禍だからこそ、できるだけ通おうと思っていた。応援消費に注目し、大事なことだと感じるようになったのは、良くも悪くも新型コロナウィルスのせいであった。」新しい段階の消費社会の壱分なんだろうけど、確実に「社会を動かす力」となっていくであろうスタイルであることには違いはない、と思います。(画像④)

 


(画像④応援消費)

 

 

■「信濃川日出雄著 日比野鮎美の山ご飯レシピ」山と渓谷社
(2020.1.30)中古本

 漫画「山と食欲と私」のコミックス①~⑧巻に収録されている全91話から、主人公・日比野鮎美が作っている「山ごはん」を中心にセレクトした50品に、「山と渓谷」に掲載された一品を加えた計51品のメニューを実際に調理したレシピ本です。

 33頁の「焼きバナナ」。作り方は、①バナナは2~3等分に切る。フライパンにバターを入れて火にかけ、①のバナナを加えて弱火でじっくりと転がしながら焼く。③軽く焦げ目がついて、表面がとろりとした感じになるまで焼き、シナモンバターをふる。62~63頁「柿ピーの炊き込みご飯」。作り方は、①メスティンに無洗米を入れ、水を注ぐ。(水の量はメスティン本体とハンドルをつなぐリベットの丸の直径に合わせる)。②1袋の半量の柿の種を入れてふたをし、中火~弱火で20分ほど炊飯する。③5分蒸らしてから残りの柿ピーを加えて混ぜ、バターをのせる。84頁の「アルファ化米お赤飯+スライス餅」。作り方は、①スライス餅は手で小さく折って食べやすくする。②コッヘルにアルファ化米お赤飯と①の餅を入れ、熱湯を注いで戻す。③付属の塩をふって食べる。こんなレシピが51品、続きます。山と渓谷社だけに、コッヘルやガスストーブ、フライパン、メスティン、クッカーなどの調理器具の説明、それから生卵、保冷食材、バターなどの運び方など、山ランチ、外ランチなど様々なシーンで役に立つレシピ本でした。巻末に、作者が書かれていました。「『山と食欲と私』の『山』は登山だけではなく山に関するすべてのもの、『食欲』は登山中の食事だけでなく山に関わる食のすべて、『私』はその2つに出会い、考えたり感じたりすることのすべてです。」

 この作品に出合えて、本当に良かったと思っております。(画像⑤)

 

 


(画像⑤日比野鮎美の山ご飯レシピ)

 

 

■「早川パオ著 まどろみバーメイド 2~4」芳文社
(2017.12.30/2018.7.28/2018.12.29/2019.6.28)中古漫画本

 イラストレーターであった早川パオの漫画デビュー作。実は、3月に「amazonプライム」で二日間で立ち続けに第6話まで、無料で観て、古書店で探したら見つかりました。都内に現れる屋台バー「サテライト」の月川雪、老舗五つ星ホテル「エリンシオン東京」で働く伊吹騎帆、そしてフレアバーテンダーの陽乃崎日代子の三人がルームシェアで暮らしながら「女性バーテンダー」として経験を積んでいく、という物語なんです。作者及び編集部の取材が実際のバーやバーテンダー、バーメイドに対して適切に丁寧に行われており、作画にあたっての構成もしっかりされている作品です。

 漫画では、かなりの登場人物なのでストーリーが展開していくにつれて混乱してしまうかもしれません。(私だけかもしれませんが)実写版では、毎回、かなり絞り込んでいるようで、わかりやすくなっています。主役の女優さんたちは、実際のバーテンダーに弟子入りしての研修を受けているだけあって、基本のオペレーションはプロとしても通用するほどの所作を演じられています。実写版は、11話までなので、全編観てみようと思います。(画像⑥、画像⑦)

 

 


(画像⑥まどろみバーメイド)

 


(画像⑦まどろみバーメイド)

 

 

■「イタリア料理&食材カタログ」新星出版社(1999.9.15)中古本
■「専門料理全書 イタリア料理」辻学園調理技術専門学校(2001.4.1)中古本
■「イタリア料理基礎技術講座」柴田書店(2000.9.30)中古本
■「おいしいイタリア料理の教科書」新星出版社(2013.3.25)中古本

 4月に、古書店で見つけて4点で税込み920円だったので、即購入しました。このプライスなので、当然、アンダーラインやマーキングがあり、書き込みもありました。勝手な想像ですが、辻調グループ校に通われていたか、イタリア料理の飲食関係の方の所有であったか?と思います。私も奥様もイタリア料理は大好きで、豊橋のフラスカティさんとは17年のお付き合いになります。コロナ前には「料理講習会」にも参加させていただきました。シェフがHP内で、イタリアやイタリア料理、食材全般について、毎日のように書かれていた時、流し読みをしていたので(失礼)、月別アーカイブに残されている、これまでの内容をしっかりと理解して読むための、いわば参考書として、この四冊を入手したのです。5月8日以降「5類以降」「業者別ガイドラインの廃止」など、もう連休前から社会が変わりつつあるのですが、まだまだ地域、業種業態によっては、さまざまな対応をされています。今号「ちりとてちん」がアップされる時期でも、経営者、オーナーシェフの考え方でコロナ対策を継続されていると思います。(画像⑧⑨⑩⑪)

 

 


(画像⑧⑨⑩⑪)

 

 

 私が喫煙しないからかもしれませんが、4月の連休前位から浜松市の街なかで、駐車場から「くわえタバコ」で車外に出てきたり、「歩きタバコ」「自転車・バイクでのくわえタバコ」など、コロナ前に戻ってしまったようです。とても気になります。

 

2023.5.18 清八



38年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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