「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

 

「2022年、コロナ自粛中のエトセトラを報告?します8月篇」

 

 清八でございます。遅くなりました。毎月、「食」に関する書籍・漫画・DVDなど、主に中古品を探しては買い求め、読んだり、観たりして学習しております。

それでは、8月分を報告させていただきます。

 

■「月刊誌 波 8月号」
新潮社(2022.7.27発行)新刊本

  毎月、楽しみにしているのが、 阿川佐和子「やっぱり残るは食欲」。59回目は「朝夜交換記」でした。「朝に食べるものと深く疑問も抱かず決めているものを、あるいは夜の料理と決めているものを、たきにひっくり返して食べてみれば、新たな楽しみに出くわすことがある。」という落ちなんだけど、子供の頃の、こんなエピソードが書かれていた。

「…だって私は幼い頃より、父に『二分半』と教えられてきた。半熟のおいしい茹で玉子を作るには、二分半が最適だと。実際、アメリカに行ったとき、レストランでボイルド・エッグを注文したら、『ハウ メニ ミニッツ?』ウェイター氏に問われた。そこで私は、「ツー アンド ハーフ ミニッツ」自信満々に答えたら、ウェイター氏、いかにも『よく知ってるね』と言いたげな笑みを浮かべて、『シェア、マム』と丁寧に頭を下げ去って行った。そしてまもなく白い陶器のカップに入った愛らしい白い玉子が二つ、お雛様のように運ばれてきた。さっそく添えられたスプーンにてコンコンと頭を叩き、十部の殻だけを取り除いて中身をすくい取って見てみれば、なんと上出来の半熟状態であることか。そのとき私は確信したのだ。『たしかに二分半だわね』あれはいったい何だったんだ?どの段階から勘定して二分半だったのだろう。お湯が沸騰した直後にストップウォッチをセットするということか。そのとき使う卵は冷蔵庫から出したばかりの冷え冷え状態のほうがいいのか。それとも常温に戻してからのほうがいいのか。…」(画像①)

 


(画像① 波)

 

■「月刊誌 東京人 9月号」
都市出版(2022.8.3発行)新刊本

 特集「寄席 東京・話芸の生命線!」です。都内の寄席、演芸ホールの紹介と、「小さな演芸場の仕掛け人に聞く」でした。緊急事態、まん延防止、そして第七派、そういえば、都内の小さな会巡りが出来なくなってからもう三年半以上になるのだなぁと、いろいろな思いが頭の中を支配しております。ところで、102~105頁に「東京スパイス紀行③」として、港区三田のフランス料理店「コートドール」で、6月下旬から9月上旬頃まで提供される「梅干しとしその葉のスープ 金糸うりを浮かべて」が紹介されてました。日常素材の青紫蘇の葉と赤く酸っぱい梅干し、濃度をつけるための少量のアボガド、透明なトマト水をミキサーで攪拌するだけのスープ。「素材同志がミキサーのなかではじめて出合い、融合する間もなく、次の瞬間にはもうお客様の口に入っている。そんな感じで作らないと失敗します。作り置きも、一度にたくさん作ることもしない。人間の感性は理屈じゃない、1+1は2じゃないんです」

 この斎藤政雄シェフの言葉から、フランス料理のメニューにこの一皿を取り入れられた思いが感じられ、ちょっと得した頁でした。(画像②)

 


(画像②東京人 )

 

■「早川文代著 食語のひととき」
毎日新聞社(2004.3.30発行)中古本

 現・国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の研究員が書かれた「食の言葉」本でした。あとがきを先に読んだので、先に紹介します。「私は食品の分野で仕事をしています。例えば、どうしたら食品のあぶらっこさをコントロールできるのか、カリッとしたトーストはどうやったら焼けるのか、日本人が好むぷりぷりのかまぼこは中国でも受け入れられるのか、などが研究テーマです。その過程で疑問に思ったのが、そもそも『あぶらっこい』とは何か、『まったり』とは何か、『ぷりぷり』とは何を表現しているのか、ということでした。これが、私が食の言葉にかかわった出発点です。」

 8~9頁には、「まったり」が取り上げられていました。「…実は、まったりはとても古い言葉で、ルーツは奈良、平安時代までさかのぼる。欠けているところがないという意味の『全い』からきた御所言葉である。『またい』の語幹に、状態を示す接尾語『り』がついて、促音化し『まったり』となった。まったりはやがて、京都の町民に広がり、現代まで京都地方に方言として受け継がれてきた。我々京都でプロの料理人や茶道家を対象に調査したところ、まったりは、感性の豊かな人が、完成度の高い料理に対して使う、極上の褒め言葉であるという。これという定義は難しいが、まろやかで、口にゆっくり広がり、深みがあり、ほのかに甘い感じを表現する。」

 164~165頁には、「秋味」が取り上げられていました。「…しかし、もともとの『秋味』は、別の意味である。秋味とは、秋になって産卵のために日本の河川に帰ってきたサケのことをいう。特に東北や北海道地方でそう呼ばれる。北洋を回遊したサケは、秋、産卵間近になると故郷である日本の河川に帰ってくる。餌を求めて春から夏にかけても日本近海を回遊することがあるが、この時期に取れるサケのことは『時知らず』という。もちろん、時知らずも美味ではあるが、やはりサケの旬は秋である。サケは秋の季語でもある。このような解説が120篇綴られていました。まさに「食語のバイブル」、古書店で100円購入出来ました。有難い事でございます。(画像③)

 


(画像③食後のひととき)

 

■「桂三枝大全集 創作落語125撰12」
キングレコード(2001.10.30発行)中古CD

 現・桂文枝師がライフワークとして取り組んでいる創作落語のうち、桂三枝時代に創作又は演じられた125席の音源がCDとして制作・発売されていて、その12枚目で、「僕達ヒーローキッズ」「スキヤキ」二席が収録されています。

 その二席目の「スキヤキ」、新しく赴任してきた新人の為に上司の家で「すき焼きパーティ」が始まる。すると部下が脂の量に文句を言いだして、いつの間にか、関西風と関東風の調理方法の違い、子供の頃の各家庭での「すき焼き」思い出話となり、部下の家族が「すき焼き」を食べながら遺産分けの話をしたら大喧嘩になったと聞いて、上司は、今から兄弟で「すき焼き」をして、仲直りをさせようとする噺なんです。ところが、ところがですよ。何と、この落語、2000年12月22日に公演した時は、本当に高座で「すき焼き」を作って食べながら演じているのです。音源には、椎茸を落としたところ、牛肉を鍋入れたところ、実況で伝わってくるんです。この時のお客さんは、この一席の後、絶対に「すき焼き」食べなあかん状態になっていると思いました。

 落語って、何でもあり、だと思います。凄いですね。(画像④)

 


(画像④桂三枝大全集)

 

 

■「Meets Regional 10月号」
(2022.8.30発行)新刊本

 書店の立ち読みで、12~17頁掲載の「落語家・桂二葉さんの、谷町で過ごす一日」を読んで、即、購入しました。大阪市中央区谷町の飲食店特集なんやけどね。空襲による被害を免れたため、狭い路地には長屋が残り、建物の再生や保存時には生活感のあるリフォームを続けている街なんですよ。八百屋、魚屋、豆腐屋、肉屋、鰹節店、製めん屋、鶏肉専門店、昆布屋、スパイス専門店など、専門店が並び、画僧からでも生活感が漂ってきました。多国籍料理店、朝ごはん屋さん、ランチ自慢店、立ち飲み屋さんの多いこと、多いこと。「ほうじ茶で薄揚げを煮込んだ、お稲荷さん」「ベトナムつけ麺ブンチャー」「黒毛和牛ヘレ定食」「エスニックしめ鯖」「ツナポテトサラダ」「茶碗サイズの炒飯」「稚鮎のフリット」「ずわいがにとズッキーニのキッシュ」「棒寿司」「鯖のきずし」「ゴーヤのお浸し」「かつおでんぶ」「かやくご飯」「厚焼き卵サンド」「カオソーイ」「カオマンガイ」「ルッコラと蛸のサラダ」「子羊の串焼き」などなど、コスパも良さそうやし、さすが「食い倒れの街」。もう、直ぐにでも、「行きたい!」「食べたい!」「味わいたい!」。(画像⑤)

 


(画像⑤Meets)

 

 久しぶりに「別冊ちりとてちん」は、「その一」「その二」として、二本掲載させていただきます。そちらも、ご覧下さい。

 

 

2022.9.20 清八



38年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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