「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

「雪中行軍からエル・ブリの話になりました」


 清八でございます。
 ごぶさたでございました。3月17日・18日と、久しぶりに八ヶ岳に行ってきました。以前は、クロスカントリースキーを楽しみに行っていたのですが、今回は、山歩きの仲間15名で、何と、雪上「チーズ・フォンデュでわいわいワイン会」という企画を実現させたのです。2月には、事前準備として拙宅内で実際にチーズ・フォンデュをいろいろな食材で試してみました。フランスパンとソーセージだけでは味気ないので、ブロッコリー、ピーマン、プチトマト、アスパラガス、人参、ホタテ、ハム、それと日本の一般的な家庭ですから、竹輪とかはんぺんも用意しました。豊橋産のウズラ卵の水煮も加えました。それはそれは、楽しくて、美味しくて、せっかく揃えておいたワインまで手を出してしまい、再び、ワインを用意していただいたほどでした。まだ、ご記憶に新しいと思いますが、三月の土曜日は毎週、天気が悪かったです。17日も出発して蓼科の別荘地までは雨、それもかなりの雨量でした。
ゴンドラの駅からは小雪になっていたので、用意していったワインと食材、鍋等を分担してザックに詰め直し、雪山用の完全装備でゴンドラに乗り込みました。山頂駅を降りると、もう大雪状態でした。縞枯山荘まで行軍し、軒先でも貸していただいてと淡い期待を抱いていたのですが、クラブツーリズムの団体さんに押さえられて、やむなく、本当に雪上での実施となってしまいました。フォンデュ鍋の中のチーズと降り込む雪が同じ色ですので、チーズを食べているのか雪を食べているのかわからなくなり、途中で中止となってしまいました。(写真①、写真②)

   
写真①   写真②   写真③

それでも、今回の目玉であるNVホットワイン(写真③)は、おいしかったです。追加情報ですが、ご家庭での「わいわいワイン会」では、バーニャカウダにしてもアヒージョにしても日本の食材(魚肉ソーセージ、イカ、タコ、ウズラ卵、竹輪、はんぺん、かまぼこ、白身魚)をたくさん取り入れるとメイン料理となって楽しめますよ。

 実は、今回、この日に宿泊した蓼科温泉ホテル「親湯」のことを書こうとしていたのですが、4月1日に浜松市中区田町のシネマイーラで観てしまった「エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン」(写真④、写真⑤、写真⑥)を早く伝えたくて、テーマを変更しながら書いています。ごめんなさい。スペインのカタルーニャ地方で2011年7月30日まで営業していた三ツ星レストランで、その45席に対して、世界中から年間200万件の予約申込みがあり、世界中のセレブが集まっていたレストランでした。毎年4月から10月まで営業して、残りの半年は新しいメニュー開発のため、バルセロナにある研究用アトリエで合宿しながら過ごすという変則的なレストランを続け、進化し続けていたのです。

   
写真④ 写真⑤ 写真⑥

 この映画は、近い将来バイブルになるかもしれません。二年程前にシネマイーラで上映された「ファイティング・シェフ」は、2007年1月に開催された第10回ポキューズ・ドール国際料理コンクールにスペイン代表として出場したヘスース・アルマグロ氏と彼の同僚、スタッフたちがどのように準備し、試作を繰り返し、本選に望んだのか。そして、本選での一日目と二日目を記録したドキュメント映画でした。手持ちカメラでの撮影が多いためか画面が動いたり、企業秘密ともいわれるレシピが盗まれないよう手順通りに編集されていませんでした。それは、閉店を決めてかの撮影なのか、オーナーシェフがレシピの作り方もシェフの手元撮影も許可しているからです。毎年、半年間かけて、新しい料理を創造し、構築する。それも継続しての作業なんです。化学反応を引き出す調理器具、新しい組み合わせのための調味料、着色剤、他の料理人からは批判もあるようですが、これも試作方法として認められるべきだと思います。私の大好きな料理人のお一人である、京都・吉田屋料理店の吉田裕子さんのブログに、「フランス料理は食材、温度・時間による化学反応であることを身を持って知った上で、京料理(おばんざい)も戻られた」とありました。この「化学反応」。この映画ではすべて理解することができました。私の独断と偏見では、この「エル・ブリ」は、スペインの「招福楼」です。建物の外観、門からドアまでのエスコート、内装、食器、マネージャー、シェフ、ソムノエ、ギャルソン、35皿以上の料理を3時間から4時間で提供していくその間(ま)、まさに日本人好みのレストランだと想像できます。シェフの会話を聴いていると、「ショウユ、マツタケ、ユズ、カキ(柿)……」と次から次へと日本語の食材名が使われていることが理解できます。このファラン・アドリア氏も日本の京割烹・懐石料理に魅了され、日本の食材・料理法を毎年のように取り入れて、試作を重ねられていたそうです。どうか、この映画は、プロ・アマを問わず、飲食店・食材業・サービス業に携わっておられる方、また、これから目指されている方は、必見です。調理師学校、パティシェ専門校では、このDVDを生徒一人に一枚渡して、必ず観させるようにすべきではないかとも考えてしまいました。4月13日(金)までは、シネマイーラで上映してくれています。感謝感謝です。今年、これを観ておかないと、人生で最大のマイナスになると思います。騙されたと思って、観て下さい。

シネマイーラ:http://www.cinemae-ra.jp/
エル・ブリの秘密:http://www.elbulli-movie.jp/

2012.4.7


38年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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