料理に素材が必要なように、ジャズにも「音」という形のない素材がある。ジャズはいわば「音の料理」。
では「音の料理人」ROOこと佐藤 竜が調理する甘辛ジャズエッセイをお愉しみください。


“KOOP ISLANDの悩ましさの原因 ”

 

  いよいよ悩ましさの原因を探ることにする。‥‥‥‥‥

  その前に前回の「最近の出前ブームは恐るべきものがある。云々。その中で多くの若者? が恩恵に預かっているのが音信の出前なのだ。」という"音信"について説明したい。通常 "音信"と言えば、「音信不通」と言う時に使う。だから間違いやすいのだが、私は"音信"の出前を「"音楽配信"という出前」という意味に使った。配信そのものが略語なのだから、それを縮めるのはひとりよがりであったと反省している。音楽配信でよかったのです。配信そのものが出前なのだ。

 さて、KOOP ISLAND BLUESの悩ましき魅力は、アン ブリュンという若いノールウェイの神秘的なヴォイスにあることは前回でも指摘しているが、それだけではないことを曲づくりの中から検証したい。

  まず、この曲は変ロ短調で歌われており、おおまかな旋律は次の通りである(私が聴いて、譜面化したものなので正式な譜面ではないことをお断りしておく)。


  譜面化はしないでと思ったが、話が見えないので、残念ながら見える方法をとった。この曲の形式的魅力を簡潔に述べるならば、註1

1. 短調(マイナー)は神秘的なメロディを作りやすい。主和音が「ラ、ド、ミ」この譜面では変ロの音が 「ラ」になる。註2

2. 1小節目は主和音でミファミ〜というメロディ。ラドミの和音にファを入れるのは、よくチック コリアが好むサウンドで、悩ましいメロディの一部である。♯5というものだ。

3. 13〜16小節は属七和音(ドミナント7thという 「ミ、♯ソ、シ、レ」の和音)になっていて、そこから17〜20小節までの曲想を変化させる山場の下属和音(サブドミナントという)に一気に盛り上げるが、通常の逆の進行になっているところが魅力を倍加させている。

4. さらに、この曲の悩ましさの頂点になっているところが、このサブドミナントのところだ。19〜20小節の「レ、ファ、ラ」の和音のところで、「ミ、レ、シ、ファ」というメロディになっている。いったい「レ、ファ、ラ」のコードに「シ」と「ミ」が。‥余程訓練した歌手でないと正しい音程にならないところだ。日本の歌曲やロシア民謡などの節回しにはないもので、「レ」をこの和音の 1度音程とすると「シ」は 6度(オクターヴ上の13度とも言っている)。「ミ」は 9度でこれらの音程が 悩ましさのおおもとなのだ。つまり、当たり前に予測できるメロディは親しみはあってもスリルがない。それに対してこういった音(テンション ノートと呼んでいる)の使用はその曲の個性を際立たせている。

  以上。これに先に述べたアン ブリュンのヴォイスの魅力が加わることによって完璧になる。と、まあこんなところだが、いかがなものか 是非、インターネットなどで試聴してみて頂きたい。

 

註1 この楽譜は正式なものではなく、聴き取ったものなので、正式な楽譜を手に入れるのがよい。「残念ながら・・・」といっているのは、できたらあまり専門的になりたくなかったからだ。

註2 ラシドレミファソラという音階は、文字通り「音の階段」であって、音名ではない。音名を述べたい時には音階名(階名という)を使わないで、変ロ若しくは、英語でB♭ビーフラット、ドイツ語でベーという。ベー フラットとは言わないので注意が必要だ。ここでは、メロデイの流れの面白さを述べているので、わかりやすく階名にしてある。

 

※佐藤 竜のプロフィールは こちら から。



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