「ちりとてちん」?
実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

 

「2024年、アフターコロナのエトセトラを報告?します 3月篇」

 

 清八でございます。毎月、「食」に関する書籍・漫画・DVDなど、主に中古品を探しては買い求め、読んだり、観たりして学習しております。それでは、3月分を報告させていただきます。三ツ星会の勉強会報告もあります。

 

■「暮しの手帖 第29号」暮しの手帖社 (2024.3.25) 新刊

 高校二年生、約53年前からの定期愛読書の最新号です。

 74~77頁は、第29回「わたしの仕事」。練馬区で昭和15年創業の「川原製粉所」のレポートでした。餅米からのひなあられつくり、麦茶の焙煎、節分用の豆煎り、などの会社でした。「‥親父を見ていて、仕事の過酷さはわかっていたつもりです。窯の火で夏はとにかく暑い。重いものを扱う力仕事。麦茶を作ると体中真っ黒になります。うちは昔ながらの製法で、砂が入ったドラム缶みたいな大麦が爆ぜることで、香りを引き出すんです。大量に麦茶を作る大手企業は熱風で焙煎するので、そこが大きな違いでする。うちの特徴は、煎りむらができること。色の濃いもの、薄いものが自然とできるんです。‥」

 156~160頁は、料理家の安田花織さんの工夫料理「春こそ、酒粕」でした。春は、一週間単位で気温や湿度が変わってしまうので、体液の流れが滞ったり、腸や肝臓の働きが弱くなります。安田さんは小鍋に酒粕、水、塩をくわえて、さっと火にかけてヨーグルト状の酒粕ペーストを作っておき、野菜料理にも肉料理にも魚介料理にもどうぞ、というレシピ集でした。「にんじんとドライマンゴーの酒粕マリネ」「酒粕漬け玉子」「サワラのスパイス酒粕焼き」「酒粕のハーブオイル漬け」など、春の食材を使ったお花見料理のパレードでした。(画像①)

 


(画像①暮しの手帖)

 

 

■「木村衣有子著 家庭料理の窓」平凡社 (2022.8.24) 中古本

 食文化の文筆家さんが「ウェブ平凡」に掲載された連載の単行本でした。

 44~58頁の「朝は味噌汁と決まっていたわけじゃない」に仙台味噌が登場していた。「『江戸の仙台味噌』のはじまりは、仙台藩下屋敷での、江戸在勤の藩士3000人の生活を賄うための味噌づくりからだそうで、江戸の味噌問屋がそれを買い付けて『仙台味噌』として売られてもいたという。往時は、仙台味噌屋敷、と呼ばれており、今は『仙台味噌醸造所』として同じ場所で同じ仕事が続けられている。『仙台味噌醸造所』は(品川区)大井町駅と青物横丁駅のあいだにある。」

 109~123頁の「君の名は肉じゃが、そしてポテサラ」には、1964年のNHK「きょうの料理」のテキストから「肉じゃが」という名称が登場したと書かれていました。魚柄仁之助さんの「国民食の履歴書」によれば、「日本に古くからあった里芋の『いも煮』と西洋料理として入ってきたビーフシチューのような『肉とじゃが芋の煮物』が混ざり合って、今日言うところの肉じゃがになった」「70年代の居酒屋にはよく通いましたが、その頃の居酒屋のお品書きに『肉じゃが』という表記はあまり記憶があのません」「1980年代、東京・下町の居酒屋を飲み歩いていると、どこの店に行っても壁に貼ってあるお品書きに『肉じゃが』が見られるようになってきました」

 私の記憶でも豊橋、浜松市内の居酒屋でも、そのようだったと思います。(画像②)

 


(画像②家庭料理の窓)

 

 

■「平山千鶴著 おくどさん歳時記」美乃美 (1984.11.20) 中古本

 京都中京区に生まれ育ち、洛北鴨で暮らす主婦が、「月刊京都」に1980年1月号から1984年12月号まで連載された京の十二カ月。料理、京菓子、日々の生活、戦前、戦中、戦後の庶民の生活が見事に記録されています。

 11~14頁の「花びら餅」から、「‥京の娘には、お茶とお花が必須のお稽古事でありました。わたしも制服を脱ぐと、お稽古に上がりました。お花はわたしの性に合わないようでした。第一、先生は、自然を生けるのだと教えながら、情容赦なく枝葉を切り落とされるのが気に入りませんでした。先生が生けて見せて、それを全部抜いて、もう一度同じように生けるのが、お稽古というものでしたが、人のまねをする事が苦手なわたしは、上手に生け直したためしがありませんでした。‥‥同じような事なのに、お茶は好きでした。お茶も、きっちりと組み上げられた型を習うのでしたが、その間に、わたしは好みのままの美意識を絵取ることが出来ました。‥」

 155~158頁の「はもの切り落し」から、「‥祇園祭はまた、はも祭りといいます。わたしは別にこだわる訳ではありませんが、この時季には、はもの切り落しなど作っては見とうなるのです。大鍋に、たっぷりのお湯をたぎらせます。底から盛んに湧き上がる泡を見ながら、魚屋さんで骨切りをして貰うてきた、生けのはもの一口切りを入れます。透き通っていた身が、みるみるまっ白に変り、骨切りの包丁目が花のように開きます。流しに氷水を用意しておいて、この水で手早く冷します。はもの切り落しは、いうなればお刺身です。梅肉や、たで酢で頂くのです。‥」

 このようなエッセイが60篇、珠玉の一冊でした。(画像③)

 


(画像③おくどさん歳時記)

 

 

■「中央公論社編 酒場作品集 午後三時にビールを」中央公論新社(2023.6.25) 中古本

 酒場を舞台にした作品を中心に酒にまつわるエッセイ、短編小説を独自に選んで編集された、中公文庫のオリジナルでした。萩原朔太郎、井伏鱒二、大岡昇平、森敦、太宰治、坂口安吾、山之口獏、檀一雄、久世光彦、小沼丹、内田百閒、池波正太郎、吉村昭、開高健、向田邦子、安西水丸、田中小実昌、石川桂郎、寺田博、中上健次、島田雅彦、戌井昭人、吉田健一、野坂昭如、倉橋由美子、松浦寿輝、山髙登、26名の酒と酒場にまつわるエトセトラでした。

 20~23頁の「中原中也の酒」(大岡昇平)から「‥表面の中原は彼自身の生活する通りのおとなしい男で、おかずにミツバのおひたしだけでたくさん、と言ったたちの男だった。二人きりでいれば、決して喧嘩にはならない。ところがこれに酒が入ると、誰それのとこへ行こうということになり、酒が進むと、僕を味方にその誰それさんに突っかかったり、或いは誰それさんの手前、僕をののしるという工合になるのである。詩は夜中に気が向いた時、書くんで、あとはひまを持て余しているのである。彼はごく若い時、この世界のいわば絶対ともいうべきものを見てしまった奴で、考えは死ぬまでかわるはずはなかった。‥」(画像④)

 


(画像④午後三時にビールを)

 

 

■「加門七海著 お祓い日和 その作法と実践」メディアファクトリー(2009.9.5) 中古本

 私は、古書店・古レコード店散策をするようになって、53年位になります。主に、落語、寄席、演芸、演劇、映画、料理関係を探しております。それが、まったく初めてのジャンル本を見つけて購入しておりました。表紙のコピー「お祓いって何?お祓いで運がよくなるの?」に興味を抱き、ぱらぱらっと立ち読みしたら、もうレジに持っていきました。筆者によれば、「お祓い」とは、「‥つまり、清潔になり、身を軽くするということは、良き場所へ出入りできる条件と、そこに臨むためのフットワークの軽さを手に入れることなのだ。ゆえに、運も上がってくる。通常の状態から、ある種の飛躍が期待できるのが、お祓いという行動だ。‥」

 105頁の「初鰹」の欄、「初鰹は江戸っ子の心意気を表す風物だが、鰹に限らず、初物を食べると、七十五日寿命が延びるといわれている。初物はすべて、若々しい陽気を含んでいる。初物を食べる際は、陽気を一層高めて福を呼ぶため、東を向いて食べるのが決まりとなっている。大いに笑っていただきたい。

 少し前から全国展開されていった「恵方巻」以外にも、笑って食べられる環境つくりが「お祓い」そのもののようです。(画像⑤)

 


(画像⑤お祓い日和)

 

 

 久しぶりに浜松三ツ星会の勉強会に参加してきました。3月19日(火)浜松市中央区舞阪町の八木田牡蠣商店さん(画像⑥)(画像⑦)の見学と蒸し牡蠣の試食でした。1922年創業、浜名湖牡蠣の老舗養殖店さんです。この八木田家は、ご家族が浜名湖内で養殖及び販売・調理に携われ家業として幅広く営業されています。あの「うなぎの佳川」さんも親族での経営、とのことでした。

 さて、浜名湖内からあげてきた牡蠣の選別(画像⑧)、殻剥きの作業を見学、試食用の蒸し(画像⑨)をされている間に、養殖の年間スケジュール、黒鯛による食害状況、オリジナルブランド「YAGITA OYSTAR」のこだわり、今後の展開など詳しく説明していただけました。蒸し牡蠣も美味しかったです。私は、新居町在住と伝えると、新居町内での養殖牡蠣との違いも教えていただけました。本当に、ありがとうございました。

 

 


(画像⑥)


(画像⑦)


(画像⑧)


(画像)

 

 

 見学の後は、弁天島へ移動「水辺のおやど いのうえ」さんで、八木田牡蠣を取り入れたランチをいただきました。牡蠣と青海苔入りの茶碗蒸し(画像⑩)、牡蠣フライ(画像⑪)、牡蠣ご飯(画像⑫)などの特別メニューでした。ご馳走さまでした。

 


(画像⑩)


(画像⑪)


(画像⑫)

 

 さて、3月31日(日)は、「別冊ちりとてちん」に掲載していただいた、「第98回本果寺寄席 金原亭馬治の会」(画像⑬)(画像⑭)を開催出来ました。年度末の日曜日、各自治会や各種団体での役員慰労会などの影響もあり、観客は46名様でした。当日の演目は、喜六家清八「犬の目」、金原亭馬治「片棒」「井戸の茶碗」でした。久しぶりに古今亭、金原亭の「噺」、いやぁ、いいもんですね。ありがとうございました。

 


(画像⑬)


(画像⑭)

2024.4.19 清八



38年間、お付き合いしている長野市戸隠の森の喫茶店です。


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