清八でございます。毎月、「食」に関する書籍・漫画・DVDなど、主に中古品を探しては買い求め、読んだり、観たりして学習しております。それでは8月分を報告させていただきます。今回は、別冊もございます。
■林秀平著「落語で味わう江戸の食文化」三樹書房 (2013.6.25) 中古本
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著者は昭和24年生まれで東京都渋谷区在住。小学生の頃から新宿末廣亭、有楽町東宝演芸場、内幸町のイイノホール、渋谷の東横落語会、新宿の紀伊國屋ホールなどに通われていた方でした。「落語で辿る江戸・東京三十六席」「落語で知る人生の知恵」に次ぐ第三作目の著書です。
140~145頁の「二十六話 お茶」は「茶の湯」の一席です。大店の御隠居が息子に根岸の家を買ってもらった大家の別荘に茶室がついておりました。若い頃から仕事一筋で趣味もございません。そこで、この茶室でお道具一式をリユースして丁稚の定吉と二人して茶道を始めます。わからないけどプライドがありますから、素人理窟で抹茶の代わりに「青黄粉」を使い、どうも泡が立たないと「椋の皮」を茶釜の中に放り込んで泡立たせたりと、「風流だなぁ、風流だなぁ」とやっておりましたが、毎日毎晩の下痢で雪隠通いの日々が続きます。さぁ、次のターゲットは長屋の店子‥、という、今なら「パワハラ、ロジハラ」に該当するのでしょうか。
140頁に江戸時代の定年に関する記述がありました。「‥武士階級におきましては致仕と呼ばれた定年が有りまして、各藩によって若干異なるものの、おおむね五十歳以上で、幕府のそれも五十歳でありました。家督相続が原則の当時は家の全資産を継承する者が(おおむね長男)、何時までも責任の無い立場(部屋住み)に居るのは不都合であり、父の目の光っているうちに家督を継承し、‥つまりは父五十歳、息子二十五歳で家督を継ぎ、その後十年間は父が目を家の内外に対し光らせつつ、その家の末永い繁栄を期する、と言ったところが平均的な武士階級の在り方でありました。‥」
166~170頁は「三十一話 おでん」では「替り目」「お茶汲み」「味噌蔵」「五銭の遊び」に登場する食べ物です。166頁に「おでんのルーツは田楽豆腐でありまして、豆腐を串刺しにして味噌をつけ焼きにした形が、田楽舞を踊る田楽法師の姿に似ているところからそう名付けられたものだそうです。」とありました。さらに「‥『おでん』と称するのは主に関東でありまして、各種雑多な食材を同じ出し汁、同じ鍋で煮込む、そんな無茶苦茶な調理法は関東でしかやらないから、あれは『関東煮』、そう呼ぶのは関西であります。‥」
桂米朝師匠がお若い頃、落語のマクラで「‥この頃、大阪で『関西風関東煮』って看板があるんやけど、あれは何でんねん‥」言われていたのを思い出しました。(画像①)

(画像①落語で味わう江戸の食文化)
■著者 栗田路子・プラド夏樹・田口里穂・冨久岡ナヲ・片瀬ケイ・クローディアー真理・田中ティナ
「コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿」光文社(2021.1.30) 中古本
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私は、このコラム内で3回程5年前からの「コロナ禍」を政府なり厚生労働省、保健所などが検証し、反省点も含めてまとめて国民に公開しないのか?と書かせていただきました。飲食業界、キャバクラ業界など一部の業界では可能な範囲で調べられ公開していました。この本書は、イギリス、フランス、ドイツ、ベルギー、スェーデン、アメリカ、ニュージーランドの各リーダー達が何を調査し、どのような対策をし、直接自国民と対話して行動し、その中間結果に対してどのような対処したかを現地の日本人ジャーナリストがまとめられた貴重な記録でした。
99~139頁は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相でした。「‥ドイツはPCR検査体制を早急に整えるなど新型コロナウィルスへの対応が早かったが、それはバンデミックに備えた国家計画がすでに存在したからである。1999年にWHOがインフルエンザバンデミック計画を策定したのを受け、独自のバンデミック計画を策定、2005年初頭に公開した。世界的な感染拡大を想定した対策計画であり、新種のインフルエンザウィルスの拡大を遅らせること、感染による病人や死者を減らすこと、感染者の医療体制を整備すること、の三つを目的とした。‥」
138~184頁は、ベルギーのソフィー・ウィルメス首相でした。2020年2月12日の「緊急事態宣言」の一部です。「‥高齢者を思いやってあげてほしい。出かけられなさそうだったら、必要なものを届けたり、買い物をしてあげてください。どんな人がハイリスクかをもうご存じでしょう?周りにいる弱い方を守ってあげてほしいのです。‥日夜この危機の最前列にいる方々のご苦労に感嘆しています。例えば、医療関係者のみにさんの。でも、彼らだけではないのも知っています。みんなで、連帯して、家族や近しい人たちで助け合ってほしい。周りの人々が元気にしているか時々声をかけてください。ネットなどを使って。‥ソーシャルディスタンスが『社会的孤立』を意味しないように。今だけの物理的な距離が、『孤独』に繋がらないように‥」
2020年の2月です。日本では、どうなっていたでしょうか。今年の夏休み前では映画館で「フロントライン」が上映されていました。ご覧になられたでしょうか。静岡県では8月29日から9月11日まで「コロナ感染拡大注意報」が発令されていました。飲食店、サービス業のお店は冷静に対応されるべきだと思います。(画像②)

(画像②コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿)
■ちくま文庫編集部編「満腹どんぶりアンソロジー お~い、丼」ちくま文庫(2017.2.10) 中古本
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人気作家・著名人による「丼」へのこだわり、愛着、懐かしさ盛りだくさんのエッセイ50篇でした。「天丼」は14~56頁に6篇、46~51頁は久住昌之「天丼」が掲載されていました。神田神保町の「いもや」一店のエッセイ。「‥天丼というと、エビの天ぷらが二~三匹、丼から大きくはみ出しているのを良しとする人がいる。エビが立派なのが、良い天丼と考えるオヤジがいる。それもわかる。その人のために、この店にもそういう『エビ天丼』がある。でも俺は、そんなに魅力を感じない。エビがそんなに偉いか。ありがたいか。考え、古くないか。俺はエビの他にキスとかイカとか海苔の天ぷらののったヤツのほうが好きだ。‥」
まさに、私もそうです。「エビ天丼」は、めったに頼まないメニューの一つです。
57~94頁が「かつ丼」の7篇、89~94頁は神田桂一「なぜ、取締室といえば『かつ丼』なのか?」が掲載されていました。「‥『刑事にとって、かつ丼は身近な存在なんです。当直中に出前をとるときは、麺類は頼みません。110番が入るとすぐに行かないといけませんから』確かに丼物なら冷めてもおいしく食べられる。『でも、親子丼はレンジで温めると卵がパサパサになる。生ものもダメだから鉄火丼もない。蕎麦やラーメンはのびる。やはりかつ丼に行きつくんです』ちなみに、ピザもすぐ冷めるので論外だとか。刑事さんとかつ丼には意外な親和性があったのだ。‥」
この取調室の「かつ丼」で落語のマクラを考えたことがありました。「‥映画とかテレビドラマの取調室のシーンで、刑事さんが被疑者に『かつ丼』を取り寄せて、『腹減っただろぅ、これでも食べてゆっくり考えな‥』というようなシーンがあります。あの『かつ丼』代って、その警察署の経費からは出ないんです。大きな都市になると被疑者が年間に何千人ですからね、かつ丼800円として3000人、240万円になるんです。予算計上出来ないんです。あの映画やテレビドラマの時代は刑事さんや駐在さんのポケットマネーやったらしいんですが、今は出来ないんです。「利益供与」言うて、一切禁止になってるんです。ほな、どうしてるかと言うと、取調室の近くに事務室がありますね。そこに出前のメニューが置いてあるんです。被疑者に選ばせて事務員が電話して配達させるんです。支払いは、当然被疑者です。事情があって現金を持っていない場合のみ立替て、親族や保護者から返してもらう、‥当たり前と言うたら、当たり前ですわな」(画像③)

(画像③満腹どんぶりアンソロジー お~い、丼)
■椎名誠著「さらばあやしい探検隊 台湾ニワトリ島乱入」角川文 (2019.9.25) 中古本
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前回に続いて、第三次あやしい探検隊8人が29人と増員、台湾東南の田舎町の一軒家(二階建て)を2週間借りて、その間に日本から世界からあやしいメンバーが入れ替わりで集合、自炊と魚釣りと野球大会、現地での飲み歩きという、まか不思議な合宿生活のレポートでした。
「‥おれたちが借りることになっている家は二階だて。大きなテラスがあって一階と二階にかなり広いフリースペースがあり、四寝室。バストイレは四箇所にある。全体で100平米はあるらしい。‥オーナーと交渉したところ、二か月の契約が原則という。二か月分の家賃は二万五〇〇〇元にクリーニング代。おれたちは半月足らずの使用だがそれでも二か月分払わねばならないらしい。計算すると十日間でだいたい一〇万円となる。でも考えようで、三十人近い男たちが延べで計算すると百三十泊するわけだから、一人七七〇円になる。まあそれで文句ないです、ということになった。‥」
大宴会のメニューが記録されていました。「緑島近海マグロ・カツオのお造り盛り合わせ(食い放題)」「台東マグロフリット」「ドレイのショカツによるマグロ残虐剥き身」「台東カツオのコノヤロウタタキ」「死に辛麻婆豆腐」「癒し系湯葉のおひたし」「ラム肉焼きそば」「握り寿司」。
ある日は、「水餃子台湾西海岸ふう」「マグロフリット雑魚釣り魂マヨネーズ添え」「なんでもキノコの痺れマリネ」「ウコッケイ出汁のラーメン」「スルメとダイコンの郷愁煮つけ」「巨大オクラのナムル」「ガチ冷えトマト」「釈迦頭」。※「釈迦頭」(バンレイシ)とは、見た目がお釈迦様の頭に似ていることからその名がついた台湾名物のフルーツです。(画像④)

(画像④さらばあやしい探検隊 台湾ニワトリ島乱入)
■椎名誠・林政明著「あやしい探検隊 焚火発見伝」小学館 (1996.11.20) 中古本
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1994年4月から8月まで「週刊ポスト」に連載された「あやしい探検隊シリーズ」の番外編の単行本でした。「あやしい探検隊」総料理長で野外料理の達人・リンさんが料理をつくり椎名誠が飲み食べるという旅話で、その土地の食材と調理展開と完成品の写真が満載という不思議な一冊なんです。
8~28頁は、冒頭から「丹波篠山狸穴料理の企」。「タヌキ汁」「タヌカツ」「タヌキ肉のチンジォオタヌスー」「タヌキ汁うどん」の狸フルコース。19頁に「肉の臭み」を抜く手順が書かれていました。「‥手に入れたタヌキはすでに皮を剥がれ内臓も抜かれたもの。これを仲間たちと借りている奥多摩の山荘の畑に埋めるのだ。‥埋めるといってもただ埋めるだけではない。タヌキの前足と後足をはずし、それぞれ骨を抜く、胴体の背から腹にかけて付いている肉を骨からはずす。都合6ケの肉塊をひとつずつ稲藁に包み、畑に深さ40センチほどの穴を掘り、埋める。その後、手をセッケンでごしごし洗ったんだけど、いつまでも匂いがとれない。埋めること6日間、いよいよこの日が来た。臭みが抜けていなかったらどうしよう‥‥‥と不安がよぎる。しかし、掘り起こした肉の匂いを嗅ぐと、臭みは少し残っているが稲藁の発酵した匂いも強い、流水でよく洗い、試みに少量細かく切り、茹でて塩をふって食べてみる。なんと、多少固さし残っているが、臭みがぐっとおさえられているではないか。」
189~219頁は、「ニンジン島の砂浜チャンプルー」で沖縄の南西諸島・津堅島での沖縄料理でした。特に、周囲七キロ、人口690人のこの島の六割がニンジン畑。ということで、キャンプでの野外料理は「めじまぐろの刺身(コーレグースで)」「島らっきょうの塩漬け」「ニンジンサラダ」「ゴーヤーチャンプルー」「アーサー汁」「ソーミンチャンプルー」「紋甲いかの天ぷら(ソースかけ)」などなど。
牧志の公設市場での食材探しの頁には、「豆腐」について書かれていました。「‥沖縄で何がおいしいですか?と聞かれたら、豆腐ですとボクは答える。沖縄の豆腐は本当に旨い。木綿豆腐も旨いがたのしみは『ゆし豆腐』なのだ。豆乳に、にがりを打つと、フワフワと蛋白質が固まるのだが、それを固めた物が豆腐であり、フワフワ状態のものがゆし豆腐だ。‥本土から絹ごし豆腐が入って来たが、チャンプルーにするとき手がちぎったところ、全体がこわれ、鍋に入れ炒めるとさらにこわれ、グズグズになってしまった。なんだこの豆腐は、とビックリしたようだ。
私は、沖縄本島も離島も何度も行っておりますが、おじちゃんとおばちゃんがやっている食堂には必ず、「豆腐チャンプルー」があります。居酒屋には「ゆし豆腐」があります。そのお店によって味付けとか炒め具合が異なっていて、愉しめます。(画像⑤)

(画像⑤あやしい探検隊)
2025.9.26 清八