うまい料理を食べることは、人生最良の一場面といえる。 人生を料理に賭けてきた「三鞍の山荘」の今井克宏シェフが語る「Un bon plat」アン ボン プラ(うまい料理)。食卓や料理の話題を取り上げてもらいます。


「ベルンの街


※写真はイメージです
 今日は、先輩の秋岡さんが私たち二人を連れて街を案内してくれるという。
住所登録や、その他の書類を作成して届けるということで、こんな難しいことをやってくれる秋岡さんにぴったしとついて、役場(事務所)の入口をくぐったのである。

 秋岡さんのアドバイスは「なるほどね」…と思うばかりで、自分たちの何も知らなさが度がすぎるほどで、恥ずかしいかぎりだ。
「風呂」のお湯はシャワーだけに使用すること。使いすぎは、あとの人が「水だけ」になってしまうのでいけない…という。あの「たっぷり」と入れて湯舟として使用した昨夜の自分たちに早速クレームがついたようだ。「もう…旅行けばァ〜」は、ダメダ…となると、ちょっと悲しくなる。

 スイスでの生活が約6ヵ月という秋岡さんは、フランス語が「ペラペラ」である。とくに「R」の使い方がうまく、たえずその語を口に出して(いや、ノドを通して)練習をしている。あの「ウガイ」をするような「ゲーゲー」に近い音である。

  日本で、自分がやっていた勉強は何だったのだろう。スイスにたどりつき、話が通じなかったのは「すなわち」言葉ではなく、書いてある文字語だったのであろう。
残念ながらいちから出直しだ。
それにしても秋岡さんの言葉に対しての執念はすごい。今までの私のまわりにいた人たちとは比べものにならない。暇さえあれば「フランス語」を発音している。とくに前記した「R」の入る言葉は日本人には難しく、山本先生の話でも、これが発音できれば言葉は大変に発達していくということを聞いている。

 洗面所の「カガミ」の前で「R」エール、ゲール、ゲロゲロ、「クゲヨン」…クレヨンをこの発音でなければ通じない。「ガジオ」…ラジオだ。「ロギャルデ」…ルガルデ…見なさい。「メルシィ」…じゃないんだ、「メゲルシィ」…もうノドが痛くなってくる。アン、ドゥ、トロア…じゃない「トガァ」…なのだ。
日本と違って目標とする先輩、秋岡さんはかなりの言葉が話せるのに、さらなる努力をしているのである。

  日本の協会からの青年欧州派遣司厨士は、年に2名ではなく、東京オリンピックが近づいてきているせいか、私たちも含めて4名に増えているのも現地に来てはじめてわかったのである。秋岡さんたちの後に、野中さんと中谷さんが来られていたが、この二人のフランス語は「まあまあ」…の出来ばえであった。

 野中さん、中谷さんとはその後すっかり友達になり、語学の学校に行ったり、共同で「愛車」フィヤット500…を購入して、別れるまでの10ヵ月間、遊んだり旅行をしたりしたのである。この二人との話をするとあまりにも面白い話がたくさんあるので、その楽しい話をする前に話をもとに戻しておこう。

  スイス、ベルンの街は有名な時計塔(チークロック)が街の中央にあり、街を囲むようにしてアアレ川が流れている。その水の流れは早く、アルプスからの雪どけ水は冷たいが澄んでいてきれいな川である。
川辺から街には急な坂道をのぼらなければならないが、石ダタミはそんな道路につながっている。

 秋岡さんに街を案内されながら、「この川の魚「トリュットオーブルー」が有名なんだよ」と、店のスペシャルメニューに入っているという料理の名前も教えてくれた。

 飛行場まで迎えに来てくれた佐々木さんは、現在、チューリッヒのホテルで働いているということで、昨夜のうちに電車で帰っていかれたという。
佐々木さんは、もう2年目ということであったから、河崎さん(Kさんのこと)とは、ほんとうになつかしそうに話をしていたが、あとのことを全て秋岡さんに頼むということで、心細い私たちにとっては、ありがたい先輩たちの約束であった。
佐々木さんは「ドイツ語」地区のチューリッヒなので、ほとんど会話は「ドイツ語」でするため、エスワイルさんとの会話はなぜか「ツバ」がとんでいるような発音であった。

  スイス、ベルンに到着、そして過ごしたこの2日間は、我が人生にとってすばらしい日々となったのである。これも、エスワイルさんはじめ、先輩たちのおかげである。

 

BackNumber | ホームへ | 三鞍の山荘のページへ



Copyright © 2024 Salt.com All rights reserved.