うまい料理を食べることは、人生最良の一場面 といえる。 人生を料理に賭けてきた「三鞍の山荘」の今井克宏シェフが語る「Un bon plat」アン ボン プラ(うまい料理)。食卓や料理の話題を取り上げてもらいます。



シュークルート



※写真はイメージです

 ドイツ語でザワクロート、フランス語でシュークルート、日本語に訳して「酢っぱいキャベツ」。

 シュークルートの作り方は、細切りにしたキャベツに2割ぐらいの塩、ネズの実、ロリエ、丁字を入れ、重しをのせて漬け込む。2〜3日で水があがってくる。ほこりが入らないようビニールをかけ、冷暗所に1カ月ぐらいおく(キャベツの種類にもよるがスイスでは3〜4ヶ月漬け込んでいた)。その漬け込み期間が長い程、程よい酸味がでて美味しくなるが、この味覚は日本人向きではない。漬け込んであるキャベツから出た水の表面 にうっすらと「白カビ」がでる。「これがでてくると、キャベツがうまく発酵してきたのだ」と、この液をコップに入れてグイッと飲んでみせてくれた「べーラン・ベア」はドイツ人。「ウンダバァー」とごきげんに笑ってみせた。健康に良い、二日酔いに良い、胃が痛い時に良い、と良いづくめの「白カビ液」は香りも良いし、甘味もある。しかし、塩辛いのは当然である。 この漬け込んだキャベツを水洗いをする。まだ塩分が強く感じられる時に水から取り出し「鍋に入れ」、白ワイン(ドイツ人のベアはビールを入れた)、ラード、豚肉の塩漬け、ベーコンを入れて煮込む。長期漬け込んだキャベツは、しばらく煮込んでも良いが、短期間の漬け込みキャベツはすぐに柔らかくなってしまうため、本来のシュークルートの味ではない。

 一緒に煮た豚肉もキャベツとの相性が良く、マスタードをつけながら食べると最高である。しかし、残念ながら漬け込み期間とそれに加えられた手間のかかるこの料理は、日本人にはあまり好まれていない。「酢っぱいキャベツ」のイメージは、「酢っぱさ」が先行してしまって、このキャベツの持っている本当の美味しさが伝わらないのである。シュークルートの好きな人にはこの味がたまらない魅力で、「うーん食べたいなー」と口を突き出し、本当に食べたいという気持ちを前面 に表すのである。

 私もこのシュークルートが大好きで、旅行に行く目的がこれを食べることにある。本場ドイツばかりでなく、スイス、フランスでも食べられるので嬉しい限りである。しかし、パリではどこのレストランにあるわけではなく「アルザス料理」の看板の店を探さねばならないが……。

 このシュークルートの漬け込みを日本で作る場合、長期にしようと思うと「黒カビ」が出てきてしまう。これが出ると、もう美味しいシュークルートではなくなってしまう。せめてこの「黒カビ」を出さないためには短期間の漬け込みにする。酸っぱさが出ないとシュークルートではないので、「酢」を加えてやってみる。「本場」のシュークルートにはずいぶんと劣るが、まあ、それなりの味が楽しめる。

 日本で作って成功した例もある。「日本緑健」の永田さんの作ったキャベツを使用した時は「白カビ」がうまく水面 に浮かび、「酢ぱくて」「あまい」シュークルートができた。「味」はうまく出来たが、「キャベツ」の歯ざわりがイマイチで「やわらかく」、本来のシャッキリ感がないのが残念であった。

 

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