古くから愛される日本の模様の中に、「市松模様」があります。現代では“チェック”と呼ばれ、多くの人々に親しまれているこの模様は、江戸時代の歌舞伎俳優、“佐野川市松”という人物が、白と紺の正方形を交互に配した袴を粋に着こなしていたことから「市松模様」と呼ばれるようになり、今に至っています。
現代でも十分“柄”として定着しているということを考えると、江戸時代にはそのシンプルさが目立って目新しく、斬新だったのかもしれません。
「市松模様」は器の柄としても広く普及しており、シンプルな模様の中にも様々な工夫や変化が見られて、多くの人々を楽しませています。例えば、写真の「織部」の器にも見られるように、交互に釉薬をつけて変化を持たせることによって市松模様を表現したり、市松模様の中に松竹梅の絵柄を入れてみたりとバリエーション豊かに表現できます。
一見単純な連続模様に見えても、手書きとなるとそのシンプルさゆえに描くことが難しく、職人の技が光るところとなります。同じ形のものを連続してきれいに描くのは意外と難しいものです。シンプルな絵柄だけにごまかしも効かないことを考えればなおさらですね。
他にも器のちょっとした所にこの模様が隠れていたりと、よくよく注意してみるとたくさん「市松模様」を見つけることができます。イヤミがないというか…、そのさりげなさも魅力の一つです。
でも、最近は利益だけを追求した器が次々に出回っているおかげで、日本の伝統技術が衰退しているのが現状となっています。利益優先のために伝統的な物を作る人が減ったり、作り方が簡略化されたりしているのはとても悲しいことです。