暮らしの中のちょっとした気遣いが、生活を喜びのあるものに変えます。‘食’も同様。器をちょっと工夫すると、食べることが2倍も3倍も充実します。そんな名脇役の‘器’に恋した、しい葉の主人・椎葉哲夫が綴るコラム。


‘十草’


「十草(トクサ)」といっても多くの種類があります


シンプルな中にも様々な工夫が懲らされています

「十草(トクサ)模様」といえば、縦縞の模様で、古くから日本で親しまれてきた模様の一つです。湯のみやご飯茶碗、皿等多くの食器にも描かれ、「定番」過ぎて「こんな絵柄にも意味があるの?」と感じてしまう程ポピュラーな絵柄かもしれません。

さてこの絵柄のモチーフとなっている「十草」とは実際どのようななものだかご存知ですか?十草とは日本家屋などの生け垣によく植わっているトクサ科トクサ属の植物です。湿地に生える常緑のシダの仲間で、全面 “茎”という感じでまっすぐ直立し、所々黒い節があります。一年中、花はおろか、葉っぱもないちょっと不思議な植物です。

十草を乾燥させたものは砥石のように木の表面を磨くのに使用することができ、昔から家具(箪笥など)や工芸品(硯入れなどの木箱、わっぱ、和傘、印鑑、茶杓など)を作るときに、表面 を磨いて仕上げるために使用されています。これに由来して「砥草」「木賊」とも書くようです。

「金を磨くときにトクサの葉で磨くと光沢が増す」として、金を呼ぶ縁起が良い草とされています。そのほか、目の薬としても利用されます。

焼物の模様には、このように生活に密着した、身近にある物が多く描かれています。十草模様と一口に言っても様々な種類があり、一筋伸びた線だけで単色、混色があったり、線に強弱をつけて古風な感じにしてみたり、間取りをつけて中に鳥を描いてみたりと、シンプルな絵柄だけにアレンジすれば幅が大きく広がります。飽きがこないデザインですので長く使えて重宝します。

少しの点を考えただけでも、この「十草」が古くから現在に至るまで親しまれてきた理由がわかったような気がしますね。

 


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