暮らしの中のちょっとした気遣いが、生活を喜びのあるものに変えます。‘食’も同様。器をちょっと工夫すると、食べることが2倍も3倍も充実します。そんな名脇役の‘器’に恋した、しい葉の主人・椎葉哲夫が綴るコラム。


‘織部’


残暑が厳しい毎日ですが、朝夕はわりと過ごしやすくなり、秋の訪れを感じさせる季節になりました。皆様いかがお過ごしでしょうか?

 スポーツの秋、学習の秋、読書の秋、芸術の秋、食欲の秋etc... 、皆さんもいろいろな秋を楽しまれることでしょう。器も季節を感じさせます。涼し気なガラス製品から、暖かみのある陶器製品が恋しくなる季節ではないでしょうか?

 というわけで、今回のテーマは「織部」です。とても有名な名前なのでご存じの方が多いと思いますが、今回は人気の高い「織部」の魅力に迫りたいと思います。

 織部とは、今から450年以上前、伝統工芸のルネッサンス・安土桃山時代に生まれた陶器の事です。それは織田信長や豊臣秀吉の時代、日本の焼き物が変化をとげた画期的な時代でした。その中でも「織部」は今まで日本で創作された焼き物とはまったく違った材質・意匠・形態を表現した画期的な焼き物でした。銅緑釉の鮮やかな緑、斬新な造型、ユニークな文様は代表的な特徴です。

 桃山時代の茶人、古田織部という人物が、その名の由来と考えられているようですが定かではありません。

 緑色が特徴の織部ですが、微妙に色合いが違います。その理由は土にあります。鉄分の少ない土、白土と呼ばれるものを使うと織部釉がきれいに発色します。逆に鉄分の多い赤土を使うとどうなるでしょうか?荒々しく素朴な緑色を出すことができます。それらの土をブレンドしていくことによって、様々な色合いを楽しむことができるのです。

 様々な行程を経て「織部」が作り上げられます。独特の土臭さや、勢いのある文様、深緑から淡黄色へのグラデーション、釉薬の自在な動き、力強いフォルムが作り上げられていきます。そうした特徴は、数百年のときを経て現代の私達の目を釘付けにします。

 これからの季節、だんだんと気温が下がっていき、器も暖かみのあるものへと移り変わっていきます。私自身、織部の器に秋を感じる今日この頃です。どうもこの器を見ていると、秋の味覚が頭を過ります。栗や松茸、柿に秋刀魚にさつま芋etc...、この器にのせたらどんなにきれいだろうと考えてしまいます。

 ぜひ皆さんも器に秋を感じて下さい。

 


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