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もう35年以上も前の話です。昔はビールやウィスキーを売る普通の酒屋でした。大学を卒業して普通
のサラリーマン生活をしていたところに、親父の後を継ぐことになって家に帰ることになったのです。
あの時の事は今でも鮮明に覚えています。ある時、一風変わったお客さんが来店しました。店の入口付近の棚に陳列されていた、ポケット瓶の「トリスウィスキー」を精算前に飲み干して、ふらふらと歩いて山手町の道を帰っていくのです。それが日に2回続くこともあり、そんな日々が2〜3年続きました。私もその頃は商品が売れるのをただ嬉しく思っていました。
ところがある日を境に、ピタッとそのお客さんが来なくなってしまったのです。それまで毎日のように来店してくれていたお客さんですから、とても心配しました。ある時、突然その方の奥さんと名乗る一人の女性が来店し、「主人が肝硬変で死んだ」と言うのです。私にとって、とても衝撃的な知らせでした。「自分の責任で客を殺してしまったのではないか?」とまで考え、もうこんなものは売れないと思いました。
確かに、その時私が売っていなければお客さんは他の店で買ったかもしれませんが、自分のしたことに対して、大きな罪悪感のようなものが残り、酒を売ることに対する自分の姿勢やお客さんに対する責任を痛感させられた、そんな出来事でした。同時に、これからの自分について考える大きなきっかけとなったのです。

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