料理に素材が必要なように、ジャズにも「音」という形のない素材がある。ジャズはいわば「音の料理」。
では「音の料理人」ROOこと佐藤 竜が調理する甘辛ジャズエッセイをお愉しみください。



“ジャズの香辛料・その1”

 今回は「音をジャズる」時に必要な香辛料について語ろうと思う。「ジャズに香辛料が必要なのか?」 必要なのだ。香辛料というのは調味料の分野に属しているのだから、調味料のない料理はあり得ないし、中でも スパイシーな料理には香辛料は欠かせない。" spice " という英語は、「薬味」とか「香辛料」という言葉の他に、「面 白味」とか「趣き」という意味がある。「ピリッとしたところ」という意味もある。" spicy " は、 それを形容詞として使った言葉だ。

 前置きはこの位にして、ジャズのスパイスってどんなものかということについて述べてみたい。そ こで、まず最もジャズらしいという要素を音楽の3要素的にまとめると次のようになる。

  1. リズミックで、ジャズ独特の語り口(メロディ)がある
  2. ジャズ独特のサウンド(ハーモニー)がある
  3. リズムに躍動感がある(スウィング感と言ってもいい) 

 これらは、すべて「スパイシーである」という表現が適切なのだ。 しかし、文字通りの " spice" をもっと追求する必要がある。まず、メロディの中のスパイスはジャズ独特のサウンドスパイスと共にあるのだが、最も分かりやすく一例を説明すれば、明るい長調の和音 " ドミソ " にスパイスの " ラ " という音を加えるとどういうサウンドになるかということ。ちょっと専門的になって恐縮 だが、長音階に数字をつけると…

 ド= 1、レ= 2、ミ= 3、ファ=4、ソ= 5、ラ= 6、シ= 7、ド= 8

ということになる。この数字はド音と他の音の距離(音程という)を表していて、それを温度のように何度とかいうのだ。つまり " ラ " の音は ドからの距離が6度離れているというわけだ。小中学校で学習する「ドミソ」の和音は1度3度5度ということになるが、「ドミソラ」つまり1、3、5、6 と積み上げられた和音になるとどう聴こえてくるのか(鍵盤楽器などで和音として同時に弾く)。6度が曲者だァ…

 「あッ わかったゾ〜。これはグレンミラーの " 月光のセレナーデ " じゃーないか。そのサウンドだ」と 気付かれた方はジャズと縁のある方々ということになる。つまり、 " 月光のセレナーデ " の最初の出だしがこのドレミソラのハーモニーで、テーマのメロディも " ラ " から始まるのです。この " ラ " がスパイシーだと気付いた人たちは、第2次世界大戦前にもいたが、戦後の日本の若者は特に敏感に反応した。戦後の焼跡から進駐軍向けのラジオ放送が、グレンミラーサウンドを響かせていたからだ。

 私事で恐縮であるが、私の長兄はすぐそれに気付き、そのハーモニーを ハーモニカでひと吹きにできないか考えたのである。ご存知だろうが、「ドミソ」は吹けは同時に鳴るのだが、 " ラ " は吸わないと鳴らないのだ。吹くのと吸うのを一緒にやることはできない(当たり前)。そのハーモニーをハーモニカで同時に鳴らすことができるようにしたいと思ったのが私の長兄で、それをやってしまったのだから驚く。グレンミラーサウンドがハーモニカで出た !!

 その続きのお話は次回に‥‥‥‥‥。

 

※佐藤 竜のプロフィールは こちら から。



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