「ちりとてちん」? 実は落語の演目です。三味線の音色から取られた“微妙な”食材(?)「ちりとてちん」。
噺家の目から見た“食”の話題を取り上げてもらいます。

さて、どんな話が飛び出すのやら・・・

 Back Number 1〜5

“ちりとてちん”

 今回から始まります、このコラムのタイトルでニヤッとされる方は、かなりの落語好きだと思います。東京落語では「酢豆腐」という演目のこの落語、町内の友だち仲間が集まって歓談中、横町の通 人気取りの若旦那を困らせてやろうと、腐った豆腐にカビが生え、酸っぱいにおいがしているものを台湾からの土産物として試食をさせます。鼻ツン・目ピリなるしろものを一気に息もつかさず口に流し込みます。その後、この若旦那のリアクションは&、というような噺です。  
 食に関するコラムですから、これ以上は書けませんが、現実にあてはめてみるとグルメ ブームの行き着くところ?と考えるのは、ゴメンナサイでしょうか。  

 さてと、これからどれだけ続けられるか、読んでいただけるか、心配なのですが、私は 遠州生まれの遠州育ちです。地元の米や魚や野菜を食べ続けていますが、関西系の味付けが好みです。ビール大好き人間ですが、発泡酒やドライビールは嫌いです。ベルギービールにはまっています。ワインも国内で入手できるドイツワインを試飲し続けて体を悪くしました。紹興の紹興酒(メイドイン台湾ではない)も大好きです。島の泡盛も大好きです。
 このような好きな飲み物に合う食べ物は、と、いつも考えています。「食文化」という言葉がありますが、やはり食前・食中・食後酒を含めての食べ物という概念まで広げられては、いかがでしょうか。
 私の薄博な経験と独断の知識がお役にたてれば幸いです。



人前で喋るということ…

 清八でございます。
 初回のコラムへのリアクションがありました。「噺家って何ですか?」「噺家さんだったら、落語の中に登場する食べ物の話とか、噺家さんの食生活について書いて下さい」…
 そこで、今回は、こんな内容で、ゴメンナサイ。
 芸名又はペンネームとして、30年、この喜六家清八(きろくやせいはち)を使うてます。
 今まで、思い出せないくらいの、「どうして、この名前を考えついたのですか?」という 質問を受けて、その時々で適当に答えてきたのですが、一つのお答えは、「喜六・清八が上方落語の登場人物だったので、繋げただけです」です。江戸落語で言うと、「熊家八五郎」 とか「与太家八五郎」というパターンでしょうか。実は、遠州生まれの遠州育ちなのですが、落語を演ずる時は、大阪弁や京都弁を使うてます。もう一つのお答えは、大学での専攻が電子計算機であり、古本や古レコードの蒐集が趣味だったので、「きろくや」を洒落ましたという理由です。
 アマチュアの噺家ですが、今まで、いろいろな所で演じさせていただき、ホームグラウンドも持たせていただいております。
 初めての会場、お客様に接した時、こんな小噺からスタートしてきました。 「いろんな場所でお喋りをさせていただきますが、人さんの前で喋るという事はなかなか 難しいもんでっせ。逆に黙ってたらやさしいか、と言うたら、これも難しいですわな。禅宗に無言の行という荒行があって、一言もものを言うたらいかん、という修行ですが…。
あるお寺で、この無言の行をやろうというので、三人の坊さんが座禅というやつを組んで、
「さぁ、これからひぃふぅのみっつで、手を叩いたら、何があっても、もの言うたらいかんのやで…」と始めましたな。しばらくすると、一番端の坊さんの頭に蜂が飛んできて、
ブーン、チクッ、「痛っ!」。ほな、真ん中の坊さんが「たとえ蜂が刺しても、もの言うたらいかんやないか」ほな、もう一人の坊さんが「もの言わんのは、わしだけや」言うて、
皆、喋ってしもた。
 これで笑っていただけると、後は、展開が楽になりますな。

 今回は、このくらいにして、落語の中の食べ物の話、噺家さんの食生活の話、私の大好きなベルギー・ビール、ドイツワイン、大阪・京都の食材、沖縄の酒の肴、海苔や鰻、しらす、といったこの土地の食材の話など、思いつくままに書かせていただきますので、よろしく、お付き合いの程お願いします。



“シネマの厨房”

 清八でございます。
 先日(3月15日)、「マーサの幸せレシピ」を観てきました。アカデミー賞外国語映画賞の候補となっているこのドイツ映画は、ハンブルグのフレンチ・レストランが舞台となっています。一流の腕前を持つ、でも、オーナーからは、何故か“街で二番目のシェフ”と 呼ばれている女性シェフが経験していく、人との出会い・新しいレシピとの出会い…。ストーリーは書きませんので、映画館でご覧ください。
 当然、このレストランと彼女のアパートの厨房と料理シーンが克明に描かれて、ストーリーが展開されていきます。メニュー料理は当然としても、毎日の賄い料理まで登場させ 登場人物たちのキャラクターが描かれていきます。家でもできるかな?と思ったのは、生ハムをのせた、ゆでたアスパラガスの一皿でした。又の機会に詳しく書きますが、私の大好きなベルギーでは、春、白アスパラガス料理が各レストランに並びます。これから旅行される方は絶対食べてみて下さい。やみつきになると思います。 それから、イタリア料理も登場するのですが、賄い料理として、粉チーズとバジリコのみのスパゲティがありました。私は、関西系ですから、「素うどん」とか「素蕎麦」という表現をします。お店の名前は忘れましたが、コース料理の時に、茹でてオリーブオイルでからめただけの「素スパゲティ」を食べたことがあります。おもしろい選択肢であり、又、余程自信がないと出せないのに…と、感心したことがあります。
 さて、レストランや厨房、料理を扱った映画はこれまでにもたくさんあって、興味深く 観ています。台湾映画「恋人たちの食卓」では、無錫風スペアリブ・海老とグリンピースの炒めもの、苦瓜のスープが記憶に残っています。メキシコ映画「赤い薔薇ソースの伝説」 では、映画の題名にもなっている薔薇の花びらとエッセンスを使った鶉料理、言語ではなく調理シーンが主人公の心を表していました。フランス・ベトナム合作映画「青いパパイヤの香り」では、中庭の緑陰が炊事場となっていて、女性たちはしゃがんだまま米をとぎ 野菜を洗い、きざみ、ほうろうの鍋をコンロにかけて調理をしていました。パパイヤは、 青い時は野菜とみなされ、熟すと初めて果物となる、ことも初めて知りました。その後、 中華料理、沖縄料理に、この青いパパイヤを使った料理があることも知りました。映画の 楽しみ方は、人それぞれですが、料理や厨房、調理器具を見るのも面白いですよ。ちなみに、私は英語圏以外の映画を好んで観ています。料理の好みも人それぞれでしょうが、英語圏の料理より英語圏以外の民族料理の方が味わい深いし、楽しみが多いと思うてます。
 参考に…、映画に出てくる料理のレシピをまとめた書籍があります。映像文化センターから「シネマ厨房の鍵貸します」と「シネマ厨房の鍵貸します2」が6、7年前に発行されていました。ご興味のある方は、図書館にでもどうぞ…。


飲んだ後に…

 清八でございます。
会社人間の方は殆ど経験がおありになると思いますが、飲んだ後に、小腹が空いたので ラーメン屋にでも寄って帰宅…、それが元で朝ごはんが食べられなかったり、気持ち悪かったり、十人中十人、覚えがあると思います。
 例えば、屋台でも立ち食いの店でもいいから、夜遅くまで営業される、そば屋さん・うどん屋さんはないものでしょうか。(コンビニにはありますけどね)豊橋の飲み屋さん街には遅くまでやってはるうどん屋さんがあったり、屋台の店があるんです。
 1月に青春18切符を利用して、京都へ行き、金曜日夜の居酒屋体験をしてきました。
この青春18切符利用シーズンには交通費を浮かして、よく散財に出かけます。京都というと高価な懐石料理とか豆腐料理というイメージがおありになると思いますが、決してそんなことはございません。私の経験範囲では、おそらくは国内で一番早く新しい業態のお店が出来ているというイメージなんです。例えば、浜松市内にも数店ありますが、七輪(関西では、「かんてき」言います)でお客さん自身が魚介類や野菜を焼いて飲食する居酒屋、京都の町家を改造して、7〜8年前から営業してました。それから、ビールはエビスの生しか用意してないというこだわりも店も早くからありました。
ここ数年のブームは、あの丸い「ちゃぶだい」を囲んでの居酒屋(当然、お座敷ですが)です。昭和を知らない世代に受けてます。丸い「ちゃぶだい」を囲んでの合コンも流行ってますし、鍋を囲んでの会社宴会でも女性社員が嫌がらずに参加されるそうです。
 話を戻します。この時に夜11時過ぎに立ち寄れたのが、木屋町三条下る(市営駐車場北) にある「河道屋銀華」(かわみちやぎんが)という、お蕎麦屋さんでした。このお店は、1月1日以外は定休日はなく、毎日深夜まで営業されている関東風そばつゆの店です。先斗町の近くですから深夜まで人通 りが多い場所柄、「飲む前に…」「飲んだ後に…」というご常連客が多いというわけです。
 もり蕎麦・ざる蕎麦が小・並・大・特盛の四種類用意されているのにも納得できました。 そばつゆは、かなり濃いめなので、関東系の方も全く大丈夫だと思います。出張の折にでも経験してみて下さい。この「河道屋銀華」の本家「晦庵河道屋」(みそかあんかわみちや)も又の機会にご紹介したいと思うてます。
 


“せいて、せかんのやけど…回転寿司”
 
 
清八でございます。
 「せく」というのは、「急く」と書きます。関西の言葉で、「急いでんのやけど、すぐ、 とは言うてないのやけど、急いでんねン」「どっちやねン」という時によく使われる表現です。会社人間の方、とくに女性の方は一度や二度は経験されていると思いますが、社長さんや上司から、「これ、コピーしといて…」とか「これワープロしていて…」という用事がありますね。いつ、までとは言われなかったので、後回しにしておくと、5分もたたないうちに、「君、あれ、どうなってるの…」という催促、「急ぐのやったら、言うといて、もらわんと…」という経験ありますね。
 急ぐ時の食べ物として、ファースト・フードといわれているモノがあります。近頃では 反対語としてのスロー・フードが現れてきていますね。ファースト・フードの代表とされてきたのが、ハンバーガーでありフライド・チキンですね。私、個人的には国内に登場して以来、食べたくない食べ物の範疇に入れています。決して、現在のEU各国のように アメリカの攻撃に反対して拒絶しているのではなく、他の理由です。その理由を書くと、 このコラムが続けられなくなってしまうので書きませんが、全く、個人的な理由です。
 さて、もともとの日本のファースト・フードの代表というと、「蕎麦」「うどん」です。「讃岐うどん」のブームでおわかりだと思います。今や、コンビニでの定番となっている「おでん」「おにぎり」もそうですね。「握り寿司」も日本のファースト・フードの代表でした。お寿司というのは、「握り寿司」のイメージが強いのですが、全国の郷土料理としては「ちらし寿司」「押し寿司」の方が多いのです。又の機会に書きますが、岐阜県が国内一の寿司王国であることを知っていましたか?これも個人的な好みですが、私は、「ちらし寿司」(大阪では、ばら寿司、岡山では、祭り寿司がありますね)と鯖寿司が大好きです。「ちらし寿司」「押し寿司」は、今でもそうですが、予約制であったり調理に時間がかかりますから、江戸っ子には不向きで、現在の「握り寿司」が生まれたという説があります。当初は、いまのような均一な米粒の量 でもなく、俵型でもなく、片手で軽く握って、ネタを乗せただけの食べ物であったそうです。お店も屋台であったり、カウンターだけ表 に出して売ったりと、まさに、ファースト・フードだったのです。
 チェーン店も含めて、回転寿司が全国レベルで増えています。百円均一から一貫千円まで、内容も多様化してきました。ある噺家さんから伺ったのですが、東京駅から新幹線に 乗る時に、駅周辺の回転寿司に飛び込んで、2〜3皿つまんで、…という事が多くなった、と言うんです。確かに、デパ地下でお弁当や酒の肴を迷って時間をかけて買うよりは、早くて安いという理由です。それから、混んでる客席で、お弁当の包みをガサゴソするのは、 格好良いしぐさではないし、おいしく感じられないという理由もあります。なにはともあれ、江戸時代のファースト・フードが現代のファースト・フードに戻っているという一席でございました。


 

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