 |
|
 |
|
 |
| |
4月8日(日曜日)、アモンダンの美食会に参加する。
実は参加する前にちょっとした話があった。私はアモンダンのホームページの制作をさせていただいているのだが、ある日、美食会のお知らせについてファックスが届く。内容と金額をまずは一目して確認。「8,300円か。」最近の巷の美食会は、およそ10,000円ぐらいが相場。ちょっと安めだなと感じる。「ん?」金額を良く見る。「6,300円!?」あまりに驚き、お店に確認の電話をかけ直してしまった。

レストランにはジレンマがある。いや、どの職業でも上を目指そうとすればするほど感じるジレンマ。使命は一つ、お客様を満足させることなのだが、自分自身のクリエイティブな感性がお客様をもっと最上の体験をさせたいと疼く。しかしお客様は本当にそれを望んでいるのか・・・。ただ自己満足になっていないか・・・。
まだまだ成長を止めないアモンダンは、抑制させていた自らの実力を発揮するために一つの選択を行う。それが今回開催する5周年記念の美食会だ。しかし巷で流行っている美食会とは違う。金額も示している通り、いつも食事に来てくださるお客様へ心からの感謝を表したいとオーナーシェフからの全力で行う感謝のプレゼントである。
アモンダンはご主人がシェフとして腕をふるい奥様がパンを担当される、オーナーの山本ご夫妻のフレンチレストラン。アモンダンはシェフがフランスで修行を始めた場所。そしてお二人はそこで出逢ったのだ。自らの原点を忘れないよう、自分のレストランの名前に。建物はシェフが暮らした家を改築。料理とサービスを楽しんでいただけるフレンチレストランを目指している。
さてテーブルには今回のメニューが置かれている。メニューを見ると、生フォワグラ、活オマール海老、三河和牛など、素材もけっして手を抜いていない。
さらに目玉は、ドリンク付なのだ・・・!そう、一品一品シェフの料理に合わせたワインをソムリエ小川原氏が選んでいるのだ。
|
|

なんと金額にはドリンクも含まれている。左から
ヴァンムスー デュ ジュラ“バロン・クリスタル”
(アルボワ・ジュラ)
'04 リムー“トワベー・エ・オロモン”
(ラングドック)
'04 コート・ド・プロヴァンス
“ロズリーヌ・プレスティージ”(プロヴァンス)
ノンアルコールシードル
(ノルマンディ・モン・サン・ミッシェル)

今回の食材。シェフの感謝の気持ちは本物だ。
|
|
| |
|
 |
|
|
| |
|

フランス・ランド産 生フォワグラのフラン
新タマネギのヴルーテと共に

奥様が焼いたトリフュ入りフランスパン
|
|
| |

まずはワインのサービス。フランスの故郷、ジュラ地方アモンダン村の近郊で造られる、日本では珍しいジュラのヴァンムスー〈バロン・クリスタル〉でスタート。この美食会の始めにふさわしく、細かな泡立ちが美しく華やか。そして奥様のパンがサービス。ここで配られたのは前菜の生ファワグラ料理に合わせて、トリフュを練り込んだパン。いよいよ料理が運ばれる。早く食べたい!
前菜は生フォワグラのフラン。地元の新タマネギの旨味が引き出されたピューレ状のソースが上にのった、ふわっとトロけるようなフランを口に含み飲み込む。するとあんなにふわふわと軽そうなフランが、実はまったりとしており食道に流れる。これが生フォワグラの濃厚な旨さなのだ。何口か食べるとその濃厚さが舌に絡み付くようになる。そこでヴァンムスーを飲む。するとスッキリとしたバロン・クリスタルが、その濃厚な生フォワグラと解け合う。
次の料理は活オマール海老のロティ。各テーブルに料理が運ばれると、思わず感嘆の声が上がる。それはそのはず、日本ではオマール海老は半身で提供されることが多いが、今回の美食会ではフランスにならい、一人一匹丸ごと。そしてそこに惜しげもなくトリュフがかかる。調理方法は最初フライパンで殻が赤くなる程度に焼いた後オーブンへ。実にシンプルだ。こうしたシンプルな調理法は、素材そして火の通し方の良し悪しが顕著に現れてしまう。単純作業だが神経を使う一瞬。まずは尻尾の部分を。少し半生ぐらいのベストな焼き加減。弾力のある食感を奥歯で楽しんだ後は、ミソをつけて食べよう。生臭さがなにもなくクリーミーだ。合わせる白ワインは〈リムー“トワベー・エ・オロモン”〉。フランスとスペインの国境、地中海よりの町リムー産のワインで、華やかな香り、余韻に控えめな新樽の味わい。調和がとれている。「本当に旨い。」そうしてオマール海老とリムーは、各テーブルから2回目の感嘆の声をもらさせることに成功したのだ。
静かな住宅街の中にあるレストランの前は、一台の車も通っていない。高い生垣が日常と贅沢な空間を分けている。
|
|
|
 |
|
|
|
|
| |
 |
|
 |
20
|
 |
カナダ産 活オマール海老のロティ
トリュフ風味 |
|
三河和牛フィレ肉のパイ包み焼き
マデラワインとオリーヴのソース |
|
デザートの盛り合わせとコーヒー |
|
|
| |
|
|
|
 |
| |
肉料理は三河和牛フィレ肉のパイ包み焼き。日本人は霜降りのようなサシが入った柔らかな肉質を好むが、ヨーロッパでは噛み応えのしっかりとした赤身に味がある肉質が好まれる。だから今回の肉質の選択は、フランス料理を感じてもらいたいという気持ちの中に、地元の食材を愛するシェフの心を感じさせてもらえるものだった。焼き加減も最高、しっかりナイフとフォークを使い肉を切り分け口の中に。良く噛む。すると唾液が分泌され、肉の旨味が口の中に広がる。また良く噛むことによって、脳に血液を送り込み活性化させさらに感覚が敏感になっていく。ソースはクラシックなマデラソース。そこにオリーブやドライトマトを入れ、プロヴァンスの香りをさせるのが山本流。そして赤ワインはもちろん、ソムリエの選択はコート・ド・プロヴァンスの〈ロズリーヌ・プレスティージ〉。果実味が濃縮していて香りはフルーティー。しかし柔らかなタンニンが快く料理を引き立てる。ましてやオリーブやドライトマトが入ったソースとなれば『地の物に地の酒』の楽しみ方はいうまでもない。
牛フィレの付け合わせは季節野菜を野菜の水分だけで煮てある。そのため美味しさを逃がさない。トマト、さやえんどう、ポワローなど、それぞれの食感を生かすように調理されている。
デザートは、練り菓子のヌガーなどのフランス各地の伝統菓子をアモンダン風にアレンジした、8種類の女性に嬉しい盛り合わせだ。その中でも注目したのが、シュー生地に挟まれたブルターニュ地方の伝統的な塩キャラメル。しっかりとした甘さの中にちょっぴり塩味が効いている。塩キャラメルは今は流行中だが、こういうフランスの地方の伝統的な味を教えてくれるのも、レストランの楽しみである。

「動物たちは貪りふけり、人間は食べる。才知ある人だけがその食べ方を知る。」とブリヤ・サヴァランは言っている。
山本シェフの料理は、全体のバランスを考えた左右への投げ分けはあるものの、すべての球は直球であり、下手なカーブや牽制をすることのないフランス料理の古典的なスタイルを貫いている。しかし古典的な料理が美味しいと真に感じるのは、あらゆる美食というものを食べてきた人が到達する場所ではないかと思う。さらにサービスにおいても、フランスの貴族でない我々は人に仕えてもらうことに慣れていない。ここでもある程度の経験が必要。そういう意味でもレストランで楽しむには、お客の側にもそれなりの知識と余裕が必要ではないだろうか・・・。レストランで食べるということは、美味しいものを食べるということだけでなく、自分たちの感性を磨くことなのだ。
すべての食事が終わった後、周りから「美味しかった」「楽しかった」「もうお腹いっぱいだね」という感想が聞こえてきた。きっとお客様を満足させる高い技術を身につけるため、毎日細かな作業が繰り返されていると思うのだが、それを一切私たちに感じさせず、難しい理論や理屈も求めないところが気持ちがいい。それが本物が持つ実力だろう。彼らの日々の単純作業の繰り返しが、こうして回りに回って私たちのその日一番の幸せになっていった。 |
|
|
|
| |
|
|
|
 |
| |
|
|